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ホンダがオーディオに進出 「音楽用蓄電器」って何?

「年の差30」最新AV機器探訪

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NIKKEI STYLE

自動車や二輪車のイメージが強いホンダが、オーディオ用蓄電器「LiB-AID(リベイド) E500 for Music」を開発した。自社の蓄電器「LiB-AID E500」をオーディオ用に特化させたもので、音楽再生時のノイズを低減させる効果がある。ホンダはなぜ、この製品を開発したのか。平成生まれのライターと、昭和世代のオーディオビジュアル評論家が話を聞いた。

音を良くするためクリーンな電源を

小沼理(27歳のライター) 今日はホンダに来ていますが、ホンダって車のメーカーですよね。オーディオとどう関係があるんでしょうか。

小原由夫(55歳のオーディオ・ビジュアル評論家) 「LiB-AID E500 for Music」という、オーディオ機器用の蓄電器を発表したんですよ。私も「なぜホンダがオーディオ業界に?」と不思議だったので、こうして取材に来たわけです。

小沼 そもそも、蓄電器ってキャンプや災害時に使うイメージです。オーディオとどう関係があるんでしょう?

小原 家で使っているコンセントとは別にオーディオ専用の電源を用意したということでしょう。オーディオ機器を使うとき、普通の家庭はコンセントから流れる「商用電源」を使いますよね。しかし、その電気は電柱の「トランス(変圧器)」で高圧から低圧に変換され、各家庭に分配されています。この状態だと、他の家が電気を使うと細かなノイズが発生して、音に影響するんです。

小沼 本当に? なんだかすごい話ですね。

小原 オーディオマニアでは一般的な話ですよ。このノイズを嫌って、自分の家専用に電気を供給してくれる「マイ電柱」を立てる人もいますから。

小沼 え、電柱を立てるんですか?

小原 そうです。ちなみに僕もその一人ですよ(笑)。とはいえ、マイ電柱はさすがにハードルが高い。蓄電器なら商用電源から独立したクリーンな電気を手軽に確保できるという狙いでしょう。面白いアイデアだと思います。

小沼 なるほど、それで取材に来たわけですね。マニアの深淵をのぞいてしまった気がします……。ひとまず、ホンダに話を聞いてみましょう。

想定外だったオーディオファン

小沼 お話をうかがうのは、本田技術研究所「LiB-AID E500 for Music」開発責任者の進正則さん、開発を担当した小野寺泰洋さんです。

小原 率直に、なぜこの製品を作ろうと思ったのでしょう?

進 今回の製品は「LiB-AID E500」という蓄電器をベースに、オーディオ機器用の電源に改良したものです。ホンダはエンジンの技術を使って1965年にガソリン式発電機を発売しました。日本ではあまり知られていませんが、海外ではさまざまな使われ方をしていて、お客様の暮らしを支えています。1998年には「Honda独自の正弦波インバーター技術」で、商用電源と同水準の良質な電気を安定して供給できるようになりました。2017年にはガソリン式ではなくリチウムイオンバッテリーを使用する「LiB-AID E500」を発売しました。ガソリン式の場合は屋外のみの使用でしたが、これにより屋内での独立電源としての使用が可能になりました。

小野寺 「LiB-AID E500」はターゲットを決めず、広く使っていただける蓄電器として発売したものです。どのように使われているのかを調べるため、モニターや購入者にアンケートを行うと、「屋内でオーディオ用に使用している」というお客さまが5パーセントほど存在していました。想定外でしたが、社内のオーディオ好きに話してみると「たしかにこれはオーディオ向きだ」と。そうして、有志を募って実験的にプロジェクトが始まりました。

オーディオのセオリー通り

小原 具体的に、「LiB-AID E500」と「LiB-AID E500 for Music」では何が違うのでしょう? 価格も前者が8万8000円(税込み。以下同)に対し、「LiB-AID E500 for Music」は29万7000円と3倍以上です。

小野寺 バッテリーとインバーターは同じものを使用しています。違うのは、まずコンセント。フルテックの「GTX NCF」シリーズを採用しています。

小原 ほう、NCFですか!

小野寺 それから、配線はオヤイデ電気の精密導体「102 SSC」を採用したオーディオ用ハイグレード配線材。さらにインバーターがノイズを出さないよう、底面を除く5面に電磁シールド塗装を施しました。

小原 なるほど。オーディオのセオリーどおりです。

小沼 うーん、全然ついていけない……

小原 要するにかなりマニアックに追求して、ノイズを低減させているんですよ。こうしたスペックはオーディオマニアならうなると思いますが、小野寺さんと進さんはこれまでオーディオ関連の製品を作ってきたわけではないですよね。どのように開発を進めたのでしょう。

小野寺 我々自身が文献を調べつつ、社内のオーディオファンにも話を聞いて進めていきました。その中で課題となったのは、ノイズの低減と制振性の追求です。「LiB-AID E500」をオーディオファンに使っていただいていたことからも分かる通り、この段階でもオーディオ用として80点くらいは取れていたと思います。残る20点をしっかり取ろうとしたのが、この「LiB-AID E500 for Music」ですね。

できるのは「クリーンな電源を作ること」

小沼 とにかく、徹底してノイズをなくそうとしていることは分かりました。やっぱり、ノイズが少なければ少ないほど良いんですか?

進 ノイズは誤動作などの原因になりますし、低減させることが良い電源になります。ただ、それが万人にとって良い音とは限りません。蓄電器を使ったクリーンな電気は、音がきれいになる半面「音が軽く、細くなった」と言われることもあります。

小原 僕からするとクリーン電源で音が細くなるというのは言葉のあやで、電源が研ぎ澄まされるとそれだけ細部まで聞き取れるようになるので、結果的に音が細く聞こえるのだと思いますけどね。ただ、ノイズがある電気を使った方が好きという人もたしかにいます。

小沼 音に関しては主観的な評価も入ってきますもんね。

小野寺 私たちはオーディオメーカーではないので、できるのは徹底的にクリーンな電源を作ることだけです。音作りはアンプを取り換えたり、スピーカーを組み替えたりして、ユーザーの方がやるもの。「LiB-AID E500 for Music」はその前段階に特化した製品ですね。

小原 ノイズは数値で測定できるかもしれませんが、最終的には聴いて効果を確認しないといけませんよね。その評価は数値化が難しいですが、どうブラッシュアップしたのでしょう。

進 開発中はチームでの試聴に加え、社内での試聴会とアンケートを行いました。また、その後はオーディオ専門誌の編集部などに持ちこみ、試聴していただきました。

小野寺 社内で新製品を提案するときは、いつも書類で性能を説明してから実機をプレゼンするんです。だけど今回は数値化が難しいので、書類でのプレゼンには苦労しました(笑)。上司が「書類はいいから、まず音を聞かせろ」と言ってくれたおかげで、社内に製品の魅力を伝えることができました。

小沼 他にはどんな点で苦労しましたか?

小野寺 明確なゴールがなかったことですね。一般的な製品開発には重さや容量など目標値があるのですが、「LiB-AID E500 for Music」は価格の目安があるだけで、あとは基準が何もない。自分の中で基準を作っていくのが大変でした。

小原 オーディオ用コンセント一つとっても、100以上の選択肢がありますからね。その中でセレクトしていくのは相当な労力だったと思います。

進 自分たちで聞き比べ、違いを相対的に評価しながらパーツを決めていきました。オーディオ向けの部品を使うのは初めてだったので、今までの部品選定とは違う基準が求められます。ハイエンドなものも多い中、「本当にこれを使っていいのか?」という点に関してはかなり吟味しました。

オーダー開始後の反響に手応え

小沼 小原さんに聞きたいのですが、オーディオメーカーがこうしたクリーンな電気を供給できる製品を作ることはないのでしょうか?

小原 商用電源をトランス、インバーターを介することでノイズを低減させるものはありますが、バッテリーが内蔵されているものは知らないですね。バッテリーだと、商用電源から完全に遮断されているので、より理想的と言えます。だからこそマニアはかなり関心を持つと思いますよ。

小野寺 バッテリーが内蔵されているだけでなく、インバーターの性能が良いことも重要です。過去には国内メーカーが類似の製品を発売していましたが、分解してみるとインバーターは別メーカーの製品を使っていました。ホンダは自社製にこだわることで、性能を追求しています。

小沼 200台限定で、10月17日から12月18日までの受注期間を設けていますが、反響はいかがですか。

小野寺 かなり順調にオーダーをいただいています。製品は納得の出来なので、音さえ聴いてもらえたら満足していただける自信はありました。ただ、価格が30万円近いし、ウェブでの受け付けのみなので音を聴いてもらえる機会がほとんどない。さらに、オーディオ業界にホンダが通用するのかという不安もありました。どうなることかとひやひやしていましたが、初日からオーダーをいただいていてうれしいですね。

小原 強いて言うなら、定格出力300Wではパワーアンプやプリメインアンプが使えないのが物足りないところです。現在はCDプレーヤーとプリアンプ、アナログプレーヤーとフォノイコライザーに接続するイメージでしょう。もちろんそれでも効果はあると思いますが、今後さらにパワーアップした新製品を発売する予定はあるのでしょうか?

小野寺 現時点で今後の展開は予定していません。まだ製品がお客様の手元に届いていない段階ですからね。2020年の2月中旬にお届け予定なので、開発者としてはしっかりお客さまの意見を聞き、次につなげられたらと思っています。

進 「LiB-AID E500 for Music」はオーディオファンの熱い想いが発端となり生まれた製品です。お客さまのご意見や評価をいただき、大切に展開していきたいと考えています。

 インタビューの後、実際に小原さんが自宅のオーディオルームで「LiB-AID(リベイド)E500 for Music」を試聴した。結果はどうだったのか。

 私のオーディオルームに引き込んでいる商用電源は住宅を設計したときからオーディオ使用を前提とした相応のケアをしており、なおかつオーディオラックには電源のノイズやひずみを抑制する専業メーカーのクリーン電源を配備している。それらと比較しても、Lib-AID E500 for Musicのよさは実感できた。
 試聴環境としては、本機からSACDプレーヤーとプリアンプの電源を供給した。満充電の状態で、「AC出力インジケーター」は2灯点灯(約100~300W消費)を示した。
 一言でいえば、音の透明度が上がる。静謐(せいひつ)感、S/N感の向上も明らかで、全帯域にわたって澄んだ音になる印象だ。ボーカルがグッと前に出てきて、ステレオイメージの見晴らしも高まる。バッテリー電源を内蔵したオーディオ機器でよくやゆされる『馬力がなくなる』という感じはないが、エネルギーバランスがやや腰高になる(音の重心が上がる)傾向は感じた。
 オーディオ用クリーン電源と比べるとコンセント数が2口だけ、オシレーターや電圧表示がないなどの機能面では比較にならないが、この金額投資でオーディオ用クリーン電源並みのパフォーマンスが得られるのだから、価値は大いにあると思う。

小原由夫
 1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。自宅の30畳の視聴室に200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。今年買って良かったオーディオ機器は、サブリファレンススピーカーとして導入した、カナダParadigm社の「Persona B」。
小沼理
 1992年生まれのライター・編集者。Spotifyのプレイリストで新しい音楽を探し、Apple Musicで気に入ったアーティストを聴く二刀流。今年買って良かったオーディオ機器は完全無線イヤホンのAVIOT「TE-D01h」。

(文 小沼理)

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