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香港では日清食品のインスタントめんが独特の食文化をつくった

香港では日清食品のインスタントめんが独特の食文化をつくった

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。インスタントラーメンの父、安藤百福を題材に教材を書いたジェフリー・ジョーンズ教授は食品のグローバル化の成功例を日清食品に見る。

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佐藤 日本政府は今、和食を世界に広めようと力を入れています。食品や飲料などの文化製品は、自動車や家電製品などに比べるとグローバル化に時間がかかると思いますか。

めんを食べる習慣のないアメリカ人

ジョーンズ 食品や飲料は各国の文化に深く根づいている製品ですから、他の国に普及するのに時間がかかるのは確かです。そうはいっても食品の中にもカップめんのように「受け入れられやすい製品」はあります。

ハーバードビジネススクール教授 ジェフリー・ジョーンズ氏

ハーバードビジネススクール教授 ジェフリー・ジョーンズ氏

同じく自動車や家電製品であっても、普及に時間がかかる場合もあります。というのもこれらの製品は原産国のブランドや評判が売り上げに影響するからです。たとえば、戦後、日本車がアメリカで売れるまでにはかなりの時間がかかっていますし、韓国企業も長らく自動車や家電製品を海外に売り出すのに苦労していました。アメリカ人の間に「アジアの企業がアメリカ企業をしのぐような製品をつくれるはずがない」という偏見があったからです。

佐藤 現在、日本の食品企業がこぞってアメリカに進出していますが、中には商品がなかなか売れなくて苦労している企業もあります。なぜインスタントラーメンはこれほどうまくいったのですか。

ジョーンズ 日本のインスタントラーメンは驚くほど早く世界に普及していきました。カップヌードルが日本で発売されたのは1971年。その2年後の73年には、アメリカで現地生産を開始し、75年にはブラジルにも進出しています。

安藤百福は、世界市場でカップヌードルを売るには、日本と同じマーケティング戦略ではうまくいかないことを知っていました。そこで、彼は日本では「めん製品」として販売されていたカップヌードルを、アメリカでは「スープ」として売り出したのです。アメリカ人は日常的にめんを食べる習慣がありませんが、スープは飲む。だからカップヌードルはスープの一種だということを強調したのです。この戦略がアメリカで大当たりしました。

佐藤 「めん製品」ではなく「スープ」であると再定義したことが勝因だったのですね。

ジョーンズ 自国の食品を外国で売り出すときに、現地の文化に応じたポジショニングをすることがとても大切です。マーケティングメッセージを新たに作り直すことが必要なのです。

50年代、キッコーマンがアメリカで本格的にしょうゆを売り出したときも、同じようなマーケティング戦略が見られました。キッコーマンは、しょうゆを「日本食をつくるための調味料」ではなく、「ステーキにあうソース」として売り出しました。その宣伝スローガンは「肉にかけるとおいしい(Delicious on Meat)」でした。

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