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晩年の安藤百福氏

晩年の安藤百福氏

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。安藤百福を題材に教材を書いたジェフリー・ジョーンズ教授は安藤氏のマーケターとしての才能に注目する。

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佐藤 ジョーンズ教授が執筆した教材「安藤百福とラーメンの国際化(Momofuku Ando and the Globalization of Noodles)」は、アーノルド・シュワルツェネッガーが出演するカップヌードルのテレビコマーシャルを安藤百福が満足そうに見ているシーンから始まります。百福がテレビコマーシャルを効果的に使ったのは有名な話ですが、彼のマーケターとしての才能をどのように評価していますか。

マーケティングの威力、知り尽くす

ジョーンズ 安藤百福はマーケティングが持つ威力を知り尽くしていました。たとえば初期のチキンラーメンのテレビコマーシャルを見てみると、「チキンラーメンの歌」がCMソングとして流れますが、これは当時としては画期的なことであったと思います(※筆者注:初期は、♪チキンラーメン、チキンラーメン、そーらもういっぱい。一般的によく知られているのは♪すぐおいしい、すごくおいしい)

百福は「お腹を満たすもの」としてとらえられていた食品を「楽しくて面白い商品」に変えてしまったのです。

ハーバードビジネススクール教授 ジェフリー・ジョーンズ氏

ハーバードビジネススクール教授 ジェフリー・ジョーンズ氏

安藤百福は優れたストーリーテラーでした。チキンラーメン、カップヌードルなど、彼が発明した商品には、必ずそれに付随したストーリーがあり、そのストーリーが普及に大きな影響をもたらしました。この伝統はいまも日清食品グループに受け継がれています。

ストーリーを伝承していく上で重要な役割を果たしているのが、大阪と横浜にある「カップヌードルミュージアム」です。私も横浜のミュージアムに行きましたが、これらのミュージアムは「安藤百福とインスタントラーメンの伝説」を伝えるのに計り知れないほど大きな役割を果たしていると思います。

佐藤 安藤百福は優れたストーリーテラーだ、とのことですが、たとえば彼の語ったストーリーのどのような点がマーケティングに貢献したと思いますか。

ジョーンズ インスタントラーメンの発明を日本の手柄にしたところです。

安藤百福は1910年に日本統治下にあった台湾で生まれた台湾人です。戦後は66年に帰化するまで中華民国の国籍を保有していました。つまり、58年にチキンラーメンを完成させたとき、彼の国籍は日本にはなかったのです。にもかかわらず、安藤百福は「インスタントラーメンは日本人によって発明され、世界に広まった商品である」というストーリーを語り続けました。台湾人の手柄ではなく、日本人の手柄であることを強調したのです。

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