富士フイルムはなぜ変われた?「システム思考」で解く『システム思考がモノ・コトづくりを変える』より

事業変革に「システム思考」を生かすには

顧客を見据えて機能要求を定めたあとは、その実現方法を考えます。機能要求を実現するには、「目的」に応じた「機能」と「手段」をきちんと整理することが大切です。

例えば、目的が「食べ物の腐敗速度を下げたい」の場合、機能は「食べ物を冷やす」、その手段は「冷蔵庫」となります。この機能と手段の関連付けを「コンセプト」と呼び、どういうコンセプトにするかに応じて、機能要求に対応するためのシステムの性能が決まってきます。そして、その性能に応じたシステムを実現することになります。

このシステム思考の考え方は、事業変革にも活かすことができます。ここでは、富士フイルムの事業変革をシステム思考的に解き明かしてみましょう。

富士フイルムはコア技術の使い方や適応分野をシフトさせることで、写真用カラーフィルム市場の事実上の消滅という危機を乗り切りました。これをシステム思考の観点から解釈すると、以下のようになります。

富士フイルムの事業の柱の1つは、写真・映画用フィルム(以下写真フィルム)でした。この写真フィルムを機能要件で考えてみるとどうなるでしょう。それを示したのが下図です(本書の稗方氏による)。

写真フィルム事業では「ナノテクノロジー」「酸化防止剤」がコア技術として見いだせる

フィルムの成分を対象としたプロセスと手段に、「適切な場所に移動する ナノテクノロジー」「抗酸化する 酸化防止剤」があることに注目してください。これこそがコア技術と言えます。そして、ナノテクノロジーと酸化防止剤というコア技術を活かすことにより、「肌の質を高めたい」というユーザーの要望に応える化粧品が生み出されたと解釈できます。つまり写真フィルムで培われ、磨き上げられたコア技術を、顧客の要望に応じて適切に転用することにより、フィルムから化粧品へと事業構造転換できたと言えます。

このように、システム思考の考え方を採り入れることにより、目的や要望の把握と、それを実現する機能を備えたシステムの実現がやりやすくなります。ちょっと大げさかもしれませんが、日々の生活から事業構造転換まで、複雑化する環境と課題に対して適切な解決策を見いだす可能性を高めるために、システム思考を採り入れてみてはいかがでしょう。

(日経BP コンシューマーメディア局 編集委員 田島篤)

システム思考がモノ・コトづくりを変える デジタルトランスフォーメーションを成功に導く思考法

著者 : 稗方 和夫, 高橋 裕
出版 : 日経BP
価格 : 1,980円 (税込み)

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