超極細と自己修復 新世代ジェットストリーム開発秘話納富廉邦のステーショナリー進化形

2019年後半に登場したジェットストリームの新モデルは、「滑らかである」ことの先を見据えた筆記具だった(左の4本が「ジェットストリームエッジ」、右の3本が「ジェットストリームプライム 回転繰り出し式シングル」)
2019年後半に登場したジェットストリームの新モデルは、「滑らかである」ことの先を見据えた筆記具だった(左の4本が「ジェットストリームエッジ」、右の3本が「ジェットストリームプライム 回転繰り出し式シングル」)

三菱鉛筆の「ジェットストリーム」は、発売から13年を数え、今や日本を代表する油性ボールペンの一つとして、多くの人に当たり前のように使われている。当たり前になりすぎて、まるで油性ボールペンというのは、こんな風に滑らかにスイスイ書けるものだと思ってしまうほどだ。ジェットストリーム以前の油性ボールペンは、本当に書き味は重く、ペン先は紙のくずを巻き込んでダマになりやすく、水性ボールペンやゲルインクボールペンに比べると、書きやすさという点では大きく水をあけられていたということも、今や遠い過去の話のようになっている。

そのジェットストリームに新作「ジェットストリームエッジ」と「ジェットストリームプライム 回転繰り出し式シングル」が登場した。この2つはもはや「滑らかである」ことは当たり前のこととして、その先を見据えた製品になっているのが、とても面白い。現在のボールペンシーンをけん引する製品が、今、どんなふうに進化しているのかを、この2つの新製品に対する取材を元に、紹介したいと思う。

極細0.28ミリを実現

0.28ミリという細さを油性ボールペンで実現した「ジェットストリームエッジ」

「ジェットストリームエッジ」は、ボール径が0.28ミリという、超極細字を油性ボールペンで実現した製品。ゲルインクボールペンなどでは、既に実現していた(といっても製品数は多くない)0.28ミリではあるが、水性インクであるゲルインクボールペンよりもインクがにじまない分、実際の筆記幅は、この「ジェットストリームエッジ」のほうが細く書きやすい(ボールペンは紙の種類やインクの流量によって、筆記幅は変わってしまうので、ボール径だけでは厳密に最も細い線が書けるとは言えないのだ)。

従来、油性ボールペンのボール径の主流は0.7ミリから0.5ミリへと移行してきていて、0.38ミリの製品までは既に発売されていた。日本では漢字など画数の多い文字を書くため、細字のほうが人気があり、さらに手帳などの狭いスペースに小さい文字を書きたいユーザーも増えていて、細字へのニーズがあることは分かっていた。この製品も、当初は0.28ミリのボール径が実現できそうだという話があったところからスタートしたという。

「ジェットストリームエッジ」の開発を担当した永見氏。持っているのはジェットストリームエッジ

「とはいっても、0.38ミリではまだ太いと感じているユーザーが多いと思っていたわけではありません。一方で、その先の細さを求めているユーザーもいるはずだという確信もありました」と、「ジェットストリームエッジ」の開発を担当した、三菱鉛筆商品開発部商品第2グループ係長の永見周太郎氏。油性ボールペンで0.38ミリという製品が登場したことでも、かなりの衝撃だったところに、今回は0.28ミリである。かつての油性ボールペンでは考えられない事態なのだ。

「ボール径が小さくなると、インクの通り道も細くなるわけで、そこを今回クリアできた要因の一つには、低粘度油性インクだったからというのはあります。またボールペンとして、途中で書けなくなるというのはあってはならないことなので、ペン先を構成しているボールの安定性やボールを支える台座の摩耗性など、インクの最初から最後まで書き切ることができるようにするのは、かなりの技術が必要でした」と永見氏。「インクが途切れない」「インクが出過ぎない」というコントロールが難しいのは想像に難くない。しかもボール径が小さくなるほど、ボールの回転数は増すわけで、そこに十分な耐久性を持たせるのも難しい。

商品開発本部グループ長の岡本達也氏。「ジェットストリームエッジ」と「ジェットストリームプライム 回転繰り出し式シングル」両方の開発をリードした

「かつてシグノビットというゲルインクボールペンが三菱鉛筆にはあって、それが0.18ミリのボール径だったんです。そういう製品を作っていたノウハウがあったことも、今回の製品開発に生きています」と商品開発本部商品第2グループグループ長の岡本達也氏。

そうやってできたボールペンは、従来の油性ボールペンの細字タイプの常識からも外れた、新しい可能性を持つペンに仕上がったように思う。例えば、手帳などに細かい文字を書き込む場合、ちょっと指が筆記部分に当たっても、インクが擦れて文字が流れてしまうこともない。その安心感はゲルインクボールペンにはないものだろう。