ネットの情報洪水に溺れない 創造性を高める8の手段『TOO FAST TO THINK なぜ、あなたはいつも忙しくて頭がまわらないのか』

情報処理は人工知能(AI)に任せ、人間はより創造性を発揮して価値を生み出す――近年、こうした言われ方が多くされている。確かに周囲でも、経理システムの入力業務や、発注予測などでAIが活用されている例を見聞きしたりする。だが一方の「人間の創造性」はどうだろう。果たして本当に発揮されているだろうか。

自分自身を振り返ればネットやSNS(交流サイト)と常時接続しており、何かに追われて忙しいと思う半面、仕事の進め方がずいぶんと機械的になっていると感じる。顧客からのメールへの返信なども定型文で済ますなど、人間らしい工夫を発揮する機会は少なくなっているようだ。

情報過多は脳に悪影響をもたらす

もしあなたも似たような状況ならば、本書『TOO FAST TO THINK なぜ、あなたはいつも忙しくて頭がまわらないのか』(小佐田愛子訳)を開いてほしい。現代の業ともいえる情報洪水の悪影響からいかに身を守り、人間らしく生きていくにはどうすれば良いかをメディア、教育、脳科学といった多方面から解説。創造的な活動をするためのヒントを与えてくれる。著者のクリス・ルイス氏は世界有数のマーケティング・エージェンシーLEWIS社の最高経営責任者(CEO)。

インターネットが普及し、膨大な量の情報が行き交う時代の弊害として、情報過多がある。情報が多すぎると人間の脳、とくに左脳の処理中枢に大きな負荷がかかるという。情報を比較、対比したり、分析したりする機能が備わっているからだ。

分析的な「左脳型のプロセス」の特性を使いすぎると、行動にまで影響を及ぼすという。本書によると批判、不満、不安、心配などにとらわれやすくなり、「信用、信頼、希望、楽観」といった右脳型のプロセスの特性が失われるというのだ。

脳の働きと構造との関係性はさまざまな研究が進んでいるが、思考するときは左脳型プロセス・右脳型プロセスの「両方」が活動することが重要だという。つまり「忙しくて頭がまわらない」ことの原因は、デジタルノイズに圧倒されて左脳型プロセスに偏っていることにあるのかもしれない。

「怠け者になる」ことの効用

では思考プロセスのバランスを取り戻し、創造性を発揮するにはどうすればよいか。著者は著者は創造性を高めるための行動特性として下記のキーワードを挙げている。

Quiet(静けさ)…雑音を取り除く
Engage(没頭)…集中する
Dream(夢)…空想する
Release(解放)…力を抜き、芸術に触れる
Relax(リラックス)…怠け者になる
Repeat(繰り返し)…創造的な実験を続ける
Play(遊び)…急がずに楽しむ
Teach(教える)…教えることで自分も学ぶ

この8つの特性、すなわちQED3RPT(それぞれの頭文字をとって、QED3RPTと称する)を習慣化することでクリエーティビティーが得られる。例えば意識的にスマートフォンの電源を切って過ごす、というのも有効だろう。QED3RPT的な行動は一見非生産的に思える。だが、人間の大きな強みは、思いがけないインスピレーションや気づきを得られること。QED3RPTが、AIとは違う人間の能力を引き出し、創造的な分野で活躍するための切り札になるのかもしれない。

今回の評者=倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

TOO FAST TO THINK なぜ、あなたはいつも忙しくて頭がまわらないのか

著者 : クリス・ルイス
出版 : マイクロマガジン社
価格 : 1,870円 (税込み)

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