「仕事ができる」とは 対話で深めるビジネス力の本質紀伊国屋書店大手町ビル店

レジ前通路に置いた特設の平台に展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)
レジ前通路に置いた特設の平台に展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。例年秋から年末にかけては大型のヒット本が生まれることが多いが、この秋の売れ筋はいくぶんパワー不足で、ビジネス書の売れゆきは落ち着き気味だ。そんな中、書店員が注目するのは、「仕事ができる」ということを巡って2人の人気著者が深い対話を繰り広げた一冊の対談本だった。

仕事能力の中核はスキルではない

その本は楠木建・山口周『「仕事ができる」とはどういうことか?』(宝島社)。楠木氏は『ストーリーとしての競争戦略』で知られる競争戦略論の経営学者。一方の山口氏はコンサルタントとして戦略策定や組織開発に従事、最近は独立研究者としてベストセラーになった『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を書くなど、旺盛な執筆活動を展開している。その2人の濃密な対話を書籍として再構成したのが本書だ。

テーマはタイトルどおり「仕事ができるとはどういうことか」だ。「『どうしたら仕事ができるか』ではありません」と初めに楠木氏が宣言する。HOWの話ではなくWHATについて、たっぷり実例やエピソードを交えて話すことで、「仕事ができる」の輪郭をつかまえ、仕事能力の中核は「スキル」ではなく「センス」だということを次第に明らかにしていく。

「スキル」と「センス」の対比、山口氏流にいえば「サイエンス」と「アート」の対比を論じながら、「仕事ができる」像の解像度を高めていくのが第1章。センス・アート派はスキル・サイエンス派と人間力派のはざまにあって分が悪いという現状認識がまず吐露される。示せる・測れる・育成できるというのがスキルの特徴だが、センスは、例えば「モテる」能力のように、こういう能力と示すことも測ることも難しいと分が悪い構造が語られる。そこから「役に立つ」と「意味がある」の違い、問題解決の量から質への変化……そんな論点を繰り出しながら、仕事能力の中核にある「センス」とは何かを突き詰めていく。

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古今東西の「仕事ができる人」にも焦点
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