マイボーム腺の中を流れる油は当然ながら、食事でとった脂質の影響を受ける。脂っこい肉料理が好きな人は今、症状がなくてもマイボーム腺が詰まっているかもしれない。以下に、マイボーム腺機能不全のリスクが高い人を、有田医師に挙げてもらった。

<こんな人はマイボーム腺機能不全になりやすい>
●アイメイクをする(マイボーム腺の出口を塞いでいる)
●コンタクトレンズをしている(まぶたとの摩擦でマイボーム腺が外傷を受ける)
●スマートフォンの長時間使用(瞬きが減ることにより脳からの脂質分泌指令が低下)
●一重まぶた(まぶたの圧迫が強くなり、マイボーム腺が減弱しやすい)
●脂質異常(体内の脂質の粘性が高まり、固まりやすく、特に冬は詰まりやすくなる)
●冷え症(末梢(まっしょう)の血液循環が悪いと、脂質が詰まりやすくなる。実際に、有田医師のサンプル調査によると、患者のまぶたの表面温度は正常な人より約2℃低かった)[注2]
●AGA 男性型脱毛症(男性ホルモンが関わる)

マイボーム腺が詰まって炎症が起きると、ものもらいの一種である「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」になることも。「できものを手術で摘出するとその部分の腺がなくなってしまう。なるべく切除は避けたほうがいい」(有田医師)

また、マイボーム腺機能不全では、涙がたまる角膜の下部分に傷ができるという。これは「まぶたの血管から出る炎症を引き起こす物質の量が増えて、涙に溶け込み、涙がたまる角膜下部にダメージを与えるため」(有田医師)。角膜の傷が常態化すると視機能にも影響が出るので注意が必要だ。

[注2]JAMA Ophthalmol. 2013 Jun;131(6):818-9.

治療薬が登場 まぶたを温めるなども効果的

マイボーム腺機能不全で腺の数が減ったり消失したりすると、再生は困難だという。

「症状が悪化した人は、目のつらさを訴えるとともに、確実にQOL(生活の質)が下がる。早期発見し治療を開始し、症状が進まないようにすることがとても重要」(有田医師)だ。

これまでは、温める、詰まった腺を器具ではさんで物理的に油を出す、といった治療がメインだったが、19年9月に「眼瞼炎」の保険適用で「アジスロマイシン点眼薬」が登場。「アジスロマイシン点眼薬は、マイボーム腺機能不全が局所的に起こった眼瞼炎や麦粒腫(ばくりゅうしゅ)などに効果を示す抗菌薬だが、それだけでなく抗炎症作用やマイボーム腺の油の分泌を促進する作用がある。成分がまぶたに長く留まるという特徴もあり[注3]、海外ではマイボーム腺機能不全に有効という論文が多く出ている」(有田医師)という。

[注3]JAMA Ophthalmol. 2014 Feb;132(2):226-8.

マイボーム腺の出口を清潔に保ち、脂質を固まりにくくするセルフケアも日常的に実践したい。

(1)温める

まぶた全体を温め、マイボーム腺に詰まった脂質を溶けやすく、分泌しやすくする。

タオルを水で濡らし、よく絞り、電子レンジ(500Wで30秒)で温める。ビニール袋やラップで包んでまぶたにのせ、目を温める。冷たくなる前に終了。「適温はやや熱いと感じる40℃。理想は1回5分を1日2回。忙しい場合は夜のみでもいい。蒸しタオルだと、蒸気によってまぶたがぬれ、乾くときに気化熱によって温められた脂質が冷やされるので、ビニール袋やラップで覆うこと」(有田医師)。目にアレルギー症状や結膜炎などの炎症がある場合は、温めない。

(2)洗ってまつげの根元を清潔にし、マッサージ

汚れがたまりやすいまつげの根元を意識してマッサージするように洗うことで、まつげやまぶたを清潔に保ち、マイボーム腺の詰まりを解消できる。

洗顔料を手にとり、目を閉じ、上下のまぶたからまつげの根元にかけて指の腹でくるくると円を描くように優しくマッサージする。指を横に動かし、まつげの間の汚れもとる。眼科や薬局で扱っているまつげや目元専用のシャンプーは、目に染みないよう作られている。

(3)食生活を改善

マイボーム腺を温め、出口を清潔にしても、体に入れる脂質が変わらなければ再発してしまう。肉料理よりも、魚を食べる頻度を増やそう。「青魚に豊富に含まれるn-3系脂肪酸は、脂質異常を改善する効果が確認されている。高脂血症治療のための魚油の薬を処方しているが、3カ月ほどで目の症状が改善する例が多い」(有田医師)。

「症状がある人はこれらのセルフケアによって明らかに不快症状が改善する。また、症状がない人も、予防のために、毎日の歯磨きと同じように習慣にしてほしい」(有田医師)。

(ライター 柳本操、イラスト 三弓素青)

有田玲子医師・伊藤医院眼科 副院長

京都府立医科大学卒業、京都府立医科大学博士課程修了。慶応義塾大学医学部眼科学教室助手を経て、同大学眼科講師、慶応義塾大学病院眼科MGD外来主任、東京大学眼科臨床研究員ドライアイ外来主任などを務める。2005年より現職。一般眼科のほか、専門領域のドライアイ、マイボーム腺機能不全において多くの研究業績で高い評価を得ている。マイボーム腺機能不全の診断と治療の研究、啓発、普及のためのLIME研究会代表も務める。
「健康」「お金」「働く」をキーワードに、人生100年時代を生きるヒントとなる情報を提供する「ウェルエイジング」を始めました。
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