小説で知る渋沢栄一の人生 今こそ学べチャレンジ精神『渋沢栄一 人生とお金の教室』

奇想天外なストーリーで「渋沢哲学」に親しむ
奇想天外なストーリーで「渋沢哲学」に親しむ

就職活動中の学生やキャリアアップを目指しているビジネスパーソンの間で、スタートアップやベンチャー企業への関心が高まっている。チャレンジ志向を持つ若い世代にぜひ知ってもらいたい偉人の一人が、「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一だ。今回紹介する『渋沢栄一 人生とお金の教室』は、渋沢栄一の生きた時代にタイムスリップした高校生の目を通して「渋沢哲学」をわかりやすく面白く読者に伝えてくれる。有名テレビ番組を手がけた脚本家の手による、スピード感あふれるストーリー展開を堪能していただきたい。

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人気ドラマの脚本家と作家がタッグ

本書はテレビドラマの脚本家として知られる香取俊介氏と、ベストセラーシリーズ『天国の本屋』を書いた田中渉氏の2人による共著です。香取氏は1942年東京生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒で、NHKで報道やドラマを担当しました。その後、作家・脚本家となり、『山河燃ゆ』(NHK大河ドラマ、共同脚本)、『さすらい刑事』(テレビ朝日)などの作品があります。田中氏は1967年生まれで、早稲田大学社会科学部を卒業しました。松久淳氏と一緒に「松久淳+田中渉」という筆名でコンビ作家としても活動しています。2004年に映画化された『天国の本屋~恋火』の原作でもある『天国の本屋』シリーズは累計で100万部出ています。

渋沢栄一を題材にしたこの小説は、2014年7月に出版され異色の起業物語として話題を呼んだ『渋沢栄一の経営教室』(日本経済新聞出版社)を19年11月に文庫化したものです。

理不尽な代官に反骨心を燃やす

香取俊介氏

主人公は高校生の大河原渋(しぶ)。父親の経営する会社が倒産して、働きながら学ぶ環境に身を置くことになりました。ところがある時、自らの姿が八咫烏(ヤタガラス)に変えられて、江戸時代にタイムスリップしてしまいます。そこで、若いころの渋沢栄一に出会い、明治の偉人が生きた波瀾(はらん)万丈の半生を身近に見届けていくことになります。

ちなみに、渋は鳥に変身させられてはいるものの、渋沢栄一とは自由に会話をしています。2人が出会った時代は文久三年(1863年)。渋沢栄一は23歳の青年でした。

田中渉氏

渋沢栄一は現在の埼玉県で農作と藍玉、養蚕を手がける農家に生まれました。5歳にして『論語』を読み、13歳で藍の行商に出かけて商売で実績をあげたといいます。その後、坂本竜馬が籍を置いた千葉周作道場で剣術を学び、尊皇攘夷運動に参加します。主人公が出会うのはこの時期です。

情熱あふれる渋沢青年の様子は、年貢を取り立てる理不尽な代官に腹を立てるくだりからうかがえます。代官が尊大な態度で渋沢家に金を貸すよう強要し、しかもそれを踏み倒されたことに強烈な怒りを感じています。

「一文も返しはしない。それでいて高飛車に問答無用で金を出せという。ワシは農民にたかる武士を卑しいと思ったんだ。虫けら同然で知恵もないやつらに、軽蔑されなければならない。こんなばかばかしいことはないと思ってな。あれをきっかけに、こんな身分制度のある幕藩体制ではこの国はたちゆかない、根っこから変えないとだめだと思った」
(第二章 気がつけば幕末の日本 84ページ)
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