チェックインも決済もOK 南紀白浜で顔パス旅行体験
待ちに待ったオリンピックイヤーがやってくる。日経トレンディは令和2年が様々な新技術が産声を上げる激動期だと捉え、我々の生活や日本経済に深く関わるテクノロジーやサービス、交通などが今後どうなっていくかを予測した。その中から「顔認証」技術について紹介する。
◇ ◇ ◇
「顔認証」と聞くと、ビルや施設の入退場、空港の出入国などのセキュリティー管理を思い浮かべる人が多いだろう。だが近未来には、もっと身近な場所で、そして幅広い分野で顔認証が活用されるようになる。
その利用イメージを先行して体験できるのが、NECが和歌山県の南紀白浜エリアで展開している実証実験「IoTおもてなしサービス実証」だ。これはいわば「顔パス旅行」。旅行者が事前に顔データを登録しておくことで、南紀白浜空港を中心とした地域の様々な場所で、顔認証による「手ぶら」「顔パス」「キャッシュレス」の様々なサービスを利用できる。
空港に着いてモニターの前に立つと、カメラが顔を認識して「ようこそ○○さん」とメッセージを表示。自分の性別や年齢に合わせた観光案内を受けられる。
売店で買い物をする際には、店頭に置かれたタブレットのカメラで顔認証が行われ、スムーズに決済が完了する。登録した顔データに、クレジットカードの情報があらかじめひも付けてあるからだ。財布を出したり、スマホをかざしたりする必要は無い。
ホテルに着いたら、顔と登録情報で簡単にチェックイン手続きを済ませ、部屋に移動。部屋のロックも、ドア横のカメラが顔を認識して解除される。
出掛けた先の観光施設では、顔認証で入場料が支払えたり、優先入場ができたり。店舗での買い物や食事の決済も顔だけでOKだ。空港からそのまま周辺の観光に出掛ける場合は、空港で荷物を預けておくと、顔データとひも付いた予約情報を基に、ホテルの部屋に一足先に荷物が届けられる。
夏場にはビーチの売店でも、水着のままで手ぶら決済が可能。現金やスマホなどを持っていかなくて済むので、貴重品の紛失や盗難を心配せずに海水浴を思い切り楽しめる。
「カメラとソフトがあれば導入できる顔認証は、利便性と精度とのバランスに優れていて、活用シーンが幅広い」と、NECデジタルプラットフォーム事業部の山田道孝氏。今後広がるシェアリングサービスや省人化店舗などでの利用拡大も見込まれるという。
また、国内主要6空港の税関検査場電子申告ゲートや成田空港の新しい搭乗手続き「One ID」にも同社の顔認証システムが採用されており、2020年春以降に本格的な運用が始まる。
これから数年の間に、日常でも非日常でも、顔認証を利用する機会は一気に増えてきそうだ。
[日経トレンディ2020年1月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界