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伝説のトキワ荘復元 4畳半に甦る巨匠漫画家の青春

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

手塚治虫さん、藤子不二雄(藤本弘・安孫子素雄)さん、石ノ森章太郎さん、赤塚不二夫さん……。漫画家の巨匠たちが青春時代を過ごした東京都豊島区(南長崎)の伝説のアパート「トキワ荘」が来年3月までに復元され、ミュージアムとしてオープンする。

木造2階建てで風呂無し、トイレ・台所共同の同アパートは1982年に老朽化で解体されていたが、近隣住民や漫画ファンから復元を求める声が強まっていた。そこで2020年の東京五輪開催をにらみ、漫画家の巨匠たちの青春時代が甦(よみがえ)る記念施設として新築されることになった。「建物の外観や4畳半の部屋の間取り、トイレ、炊事場、玄関、階段まで忠実に再現する」という計画の詳細を先取りして紹介しよう。

さらに調査で明らかになった巨匠たちの激しいライバル心、意外な素顔や生活ぶり、「トキワ荘」最後の住人の貴重な証言についても併せてお届けする。

のべ11人の若手漫画家が入居、才能や感性を競い合う「梁山泊」

「トキワ荘」とは1952年12月に豊島区南長崎3丁目で棟上げ式を行ったアパートのこと。53年初め、雑誌「漫画少年」を発行していた学童社の編集者が手塚治虫さんを自分が住んでいた「トキワ荘」に入居するように勧めたのが最初のきっかけ。以来、学童社の雑誌に連載を持つ若手漫画家らを次々と入居させるようになり、やがて同世代の有望な若手漫画家たちが共同生活を送りながら、互いに刺激を与え合い、才能、感性、作画の技術などを切磋琢磨(せっさたくま)する梁山泊(りょうざんぱく)のような場所になってゆく。

53~62年の10年間に「トキワ荘」で暮らした漫画家は、手塚、藤本、安孫子、石ノ森、赤塚各氏のほか、水野英子さん、寺田ヒロオさん、鈴木伸一さん、森安なおやさん、よこたとくおさん、山内ジョージさんらのべ11人。このほか、つのだじろうさん、園山俊二さんらのように、住人ではなかったが「トキワ荘」に足しげく通い、漫画家同士で親しく交流していた若手も多くいた。「トキワ荘」は若手漫画家たちが結成したグループ「新漫画党」の活動拠点にもなった。

「鉄腕アトム」(手塚)、「ドラえもん」(藤子)、「仮面ライダー」(石ノ森)、「天才バカボン」(赤塚)、「うしろの百太郎」(つのだ)、「はじめ人間ギャートルズ」(園山)、「星のたてごと」(水野)……。それぞれの代表作を見るだけでも思わずため息が出る。漫画ファンならずとも、夢やロマンを駆り立てられる豪華メンバーだ。

どんな生活をしていたのだろうか? 漫画家たちは2階にあった4畳半の10部屋に住んでいた。2階平面図の後方の左側(北東側)から順番に14、15、16、17、18号室、前方の左側から22、21、20、19、23号室(23号室は新施設ではエレベータースペースに充てる)と配置され、14号室に手塚さん(後に安孫子さん)、15号室に藤本さん、16号室に赤塚さん、17号室に石ノ森さん、18号室に山内さん、19号室に水野さん、20号室に鈴木さん、森安さん、よこたさんらが入れ替わりか、ほぼ同時に暮らしていた。

押しかけ相談・議論・三題話……「恐ろしい努力家の怪物たち」

新書版「トキワ荘物語」に収録されているそれぞれの自伝などによると、手塚さんは部屋にトイレがないので窓から立ち小便をして怒られた記憶があるという。その後、富山から上京したばかりの藤本さんと安孫子さんに「自分はトキワ荘を出るから、代わりに入居したら」と勧めた。お金がない2人のため、敷金3万円は手塚さんが負担したままにしておいたそうだ。

56年に入居した赤塚さんと石ノ森さんは銭湯代を節約するため、炊事場の流しに水をためてよく行水していた。映画好きだったので2人で一緒に映画館に入り浸っていたらしい。赤塚さんはアイデアや作画で行き詰まると、先輩や同僚の部屋に押しかけては熱心に相談していた。「もしトキワ荘の住人にならなかったら、漫画をかいていなかったかもしれない」(赤塚さん)と振り返っている。

つのださんも「トキワ荘」の仲間たちと夜が明けるまで議論に明け暮れていた。特に安孫子さん、石ノ森さんらと三題話を出し合いながら、話題の展開力や構想力を磨き合う日々を送っていたという。「表面はダラケたようにみえながら、本質は恐ろしい努力家の怪物たちが集まっていた。みんな恐ろしくも尊敬できるライバル」(つのださん)と回想している。

自己研さんを積むうえで、同世代のライバルの存在がいかに大切かが分かって興味深い。

屋根や壁、玄関、炊事場などを再現、4畳半部屋もリアルに復元

計画は豊島区によって進められている。場所は「トキワ荘」があった場所から200メートルほど西方にある南長崎花咲公園に鉄骨2階建ての再現施設「トキワ荘マンガミュージアム」(建築面積約300平方メートル、延べ床面積約560平方メートル)を建設する。当時の時代の雰囲気を伝え、トキワ荘を訪れる感動も追体験してもらうため、赤みを帯びた屋根や外壁の色調や質感のほか、トイレ、炊事場、玄関、階段、廊下など生活感が漂う細かい雰囲気もリアルに再現する。若手漫画家たちが暮らした2階の部屋については、18・19・20号室を写真やヒアリングをもとにできるだけ当時に近い状態で再現する。

このほか来場者が漫画家になりきって、SNS(交流サイト)向けなどに写真撮影できるスペース(16号室)、ペン入れなどを体験できるワークショップスペース(17号室)、「トキワ荘」の基礎知識や時代背景を説明する展示コーナー(14・15号室)も設ける。1階には「トキワ荘」に関連する漫画家の関連図書約1200冊を置いたり、漫画家のインタビュー映像を流したりする「マンガラウンジ」のほか、「企画展示室」も設ける。親子連れや往年の漫画ファン、海外からの観光客らの来場を想定している。専門の学芸員も常駐させる予定だ。

SNS撮影や図書コーナーも 東京五輪にらみ池袋とセットで

「東京五輪に向けて外国人観光客がさらに増えるだろうし、漫画やアニメ、サブカルチャーのファンが集まる聖地として池袋の認知度が高まっており、再現した『トキワ荘』も魅力的な観光・文化の名所としてセットで楽しんでもらいたい」(豊島区文化商工部)。来年2月に竣工、3月22日のオープンを予定している。整備費用は約10億円(うち3億円超は寄付で賄う見通し)。入館は無料だが、特別に企画・展示するイベントについては有料にする場合もある。開館時間は午前10時から午後6時まで。月曜日や年末年始などは休館とする。

「トキワ荘」最後の住人、「壊す前に住まわせて」と直談判

「トキワ荘」にとりわけ熱い思いを持つ男性がいる。イラストレーターの向さすけさん(57)。漫画好きだった向さんは「トキワ荘」が老朽化で取り壊される直前の81年、夏から年末までの半年ほど「トキワ荘」に入居し、暮らした貴重な経験がある。いわば「トキワ荘の最後の住人」だ。

ちょうど高校を卒業し、漫画の専門学校に通っていた年。手塚さん、藤子さん、石ノ森さん、赤塚さんらの漫画を読んで育った向さんは、漫画の聖地「トキワ荘」が取り壊されることを知り、いても立ってもいられなくなった。「壊す前に少しでいいから住まわせてください」と大家に直接掛け合い、手塚さんや安孫子さんが住んだ14号室の入居人になったそうだ。

「ジャングル大帝」「鉄腕アトム」「バンパイヤ」などの手塚作品、「オバケのQ太郎」「パーマン」などの藤子作品、「サイボーグ009」などの石ノ森作品が好きだったが、このほか「トキワ荘」が登場する藤子さんの自伝的漫画「まんが道」も愛読していた。それで向さんは漫画を描き始めるようになる。「憧れていた偉大な漫画家たちがここで雑談したり、会合したり、漫画作品を描いたりしていたんだと思うと、彼らの息づかいが聞こえてくるようで、夜は興奮してなかなか眠れませんでした」と当時の心境を生き生きと振り返る。

「息づかいを感じて眠れず」 手塚さんの仕事の痕跡も発見

入居した14号室ではかつて手塚さんが、部屋に入ってすぐ左手に見える柱に仕上げたばかりの原画を画びょうで張り付けて乾燥させていた。「その画びょうの跡らしき小さな穴がいくつも柱に付いているのを見つけた時は、思わずうれしくなりました……」

向さんは浪人生だった友人と一緒に入居するが、「アパートの中は22号室に住人が1人いたくらいであとは空き部屋だったから、いろんな部屋に順番に布団を持ち込んで寝た」。当時から、「トキワ荘」は漫画やアニメの専門学校の見学ツアーのコースにもなっていて、庭先まで入ってきた専門学校の生徒たちの話し声で朝、目が覚めた経験もあるそうだ。

家賃は1万円。「築30年の年季が入ったアパートだったため、かび臭かったけど、取り壊しまでの時間を惜しむように暮らしていた」という。向さんが81年末に退去した後もアパートはしばらく解体されずにいたので、気になって、自宅の世田谷から何度もバイクで駆け付けて、様子を見に来たという。「消えゆく大切な歴史」を前にいても立ってもいられずに夢中で行動した向さん。当時の体験や撮影した数々の写真は、貴重な資料として今回の復元計画にも大いに役立っている。

(編集委員 小林明)

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