「ケースが小さい」は正義 小型完全無線イヤホン4選
様々なメーカーから発売され、ますます充実する完全無線イヤホン。音質に優れたもの、ノイズキャンセリング機能付きのものなどバラエティー豊かだが、最近「超小型」の完全無線イヤホンが人気だという。イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」に聞いたおすすめ4機種を紹介する。
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「完全無線イヤホンを探している方で『超小型である』ことを重視する方が非常に多いです」。e☆イヤホン秋葉原店で完全無線イヤホンを担当する横尾泰輝さんは、最近の動向についてこう話す。「小型のほうがかばんにもしまいやすく、ポケットにも簡単に入れられることが人気の理由です」。近年はキャッシュレス決済の普及により財布が小型化し、かばんも小型のものが増えている。そんな中で、完全無線イヤホンにも小ささが求められているようだ。
小さいと音質や性能が劣るのではないかと考える人もいるかもしれないが、横尾さんによれば「イヤホンのサイズで音質の良しあしは決まらない」。そこで今回は、e☆イヤホンの横尾さんに超小型で性能に優れた4機種を選んでもらい、聞き比べた。
外音取り込み機能も搭載/「ST-XX」
最初は米国のメーカー、SOULの「ST-XX」。SOULはグラミー賞を受賞したヒップホップアーティストのリュダクリスが監修し、ヘッドホンを作ったことにはじまるブランドだ。「ST-XX」は2019年7月に発売された完全無線イヤホン。ケースは一辺40ミリほどの立方体型で、重さはイヤホン込みで31グラムと、Appleの「AirPods Pro」(イヤホン込みで56.4グラム)より25グラム軽い。イヤホン本体は20ミリほどの大きさで、小さいながらしっかりと耳にフィットしてくれる。
試聴してみると、ボーカルがよく聴こえ、まとまりがあってバランスが良い。全体としてクリアなサウンドで、細かな音も聞き取りやすかった。生活防水レベルのIPX5防水性能を備え、連続再生時間はイヤホンのみで5時間、ケース併用で20時間と申し分ない。Bluetoothの接続も安定しており、夕方の渋谷駅周辺で使用した時にも途切れることはなかった。
また、外音取り込み機能を搭載しているのもポイント。外音の音量は調節できず、効きすぎていると感じることもあったが、そのぶんコンビニなどで音楽を聴きながら店員と問題なく会話できた。
「カラーバリエーションが6色と豊富なので、プレゼントにも人気。タグ部分にはカラビナをつけられるので、持ち運びにも便利です」(横尾さん)。7530円と完全無線イヤホンの中でも低めの価格設定となっており、身軽に出かけたい日のイヤホンとして購入するのも良さそうだ。
小さくても存在感あり/「HP-T50BT」
radiusは米カリフォルニアで、Appleの技術主幹などが中心となり設立されたメーカー。その後日本法人が本社から独立し、現在は日本を拠点にイヤホンやオーディオ機器の開発を行っている。
radiusの「HP-T50BT」は、同じく2019年7月に発売された完全無線イヤホン。ケースの大きさは幅50ミリ×奥行き35ミリ×高さ30ミリほど。「AirPods Pro」が60ミリ×45ミリ×21ミリほどなので、全体的に一回り小さいことになる。小さいながら楕円形のフォルムが手になじみ、持った時に安定感があるのが心強い。
「低域の厚みが感じられ、音の輪郭もしっかり感じられるクリアな重低音サウンドが魅力です」と横尾さんが言う通り、低音がしっかりと出ているサウンド。ボリュームを上げればEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)などのビートの迫力もしっかり体感できるうえ、中高音もくっきり感じられた。
IPX5の防水性能を備え、汗や雨にも強い。連続再生時間はイヤホンのみで6時間、ケース併用で18時間だ。こちらもBluetooth接続は安定感があり、夕方の渋谷駅でも途切れなかった。
「イヤホン自体も超小型なので、耳の小さい方にもぴったり収まります。きらびやかでゴージャスなカラーバリエーションもあり、ワンポイントアクセサリーとしてもかわいい」(横尾さん)。カラーはブラック、ゴールド、レッド、ブルーの4色で、メタリックな質感は確かに小さいながら存在感がある。耳が小さく、イヤホンをアクセサリーとして取り入れたい人におすすめだ。
耳の奥までフィット/「MODEL X」
ADVANCEDは米ニューヨークに拠点を置き、数多くのミュージシャンの声を聞いて開発した「アーティストのためのイヤホン」を手がけるメーカーだ。「MODEL X」は、2019年6月に発売された同メーカー初の完全無線イヤホン。ケースはradiusの「HP-T50BT」とほぼ同じサイズ感で、角が丸みをおびた直方体となっている。
ケースの小ささだけでなく、イヤホンの小ささに驚く。「ハウジングが耳の奥までフィットするように設計されており、耳の奥までしっかり挿し込むことで装着感があがり、ノイズを軽減してくれます」(横尾さん)
装着してみると耳の奥まで入る感覚があり少しくすぐったかったが、安定感があった。音質は高音がきらきらと聴こえ、ボーカルもはっきりと聞き取りやすい。ただ、音量を上げると少しごちゃっとして聴こえることがあった。
連続再生時間はイヤホン単体で5時間、ケース併用で25時間とタフ。Bluetooth接続は安定感があり、夕方の渋谷駅周辺でも途切れることはなかった。ただし、右のイヤホンから先に取り出さないと左右が接続されないという特徴があるので、ペアリングでやや苦戦。購入時にはこの点を考慮する必要がありそうだ。
ジャンル選ばず聴き応え/「Air-XR」
最後に紹介するのがMavinの「Air-XR」。Mavinは米カリフォルニアにあるメーカーで、これまでにも小型でハイスペックな完全無線イヤホンを開発してきた。「Air-XR」は2019年9月に発売された、今回の中では最も新しい完全無線イヤホンだ。
ケースの幅は61ミリと「AirPods Pro」とほぼ同じだが、高さは「Air-XR」は35ミリと「AirPods Pro」より約1センチ小さい。イヤホン・ケース込みの重さは32.6グラム。イヤホン単体では3.8グラムと今回紹介している他のものとほぼ同じなのだが、装着すると不思議とほどよい重さが感じられ、安心感があった。
横尾さんによれば「低域の量感がしっかりしていて、オールジャンルで聴き応えのあるサウンドを楽しめるイヤホン」。個人的には、4つの中で最も音が良いと感じた。低音寄りだが高音も澄んでいて、細かな音まで聞き取りやすい。
防水性は水深1メートルに30分沈んでも大丈夫なIPX7を搭載し、連続再生時間はイヤホン単体で10時間、ケース併用で30時間。防水性、バッテリーでは4機種の中で最も高性能だ。また、音声ガイダンスが日本語のため分かりやすく、Bluetooth接続性能も他と同様の条件で試したが一度も途切れなかった。価格は1万1750円と今回紹介した中では一番高価だが、それに見合った性能だといえそうだ。
購入時は「自分の耳にフィットするか」を確かめて
今回実際に4機種を試聴してみて、どれも音質・性能ともにハイクオリティーだと感じた。それぞれに個性はあるものの、大きさと性能はトレードオフではないと言えそうだ。
では、超小型の完全無線イヤホンを購入するときにはどんな点に気を付ければいいのか。横尾さんは「一番のポイントは、自分の耳にフィットすること」と話す。
「先日、JR西日本が『乗り降りの際にワイヤレスイヤホンを線路に落とされるお客様が増えている』と注意喚起し話題になりました。まず、ツルツルとしたボディーでインイヤー型だと耳から抜け落ちやすく、装着中に落ちる可能性があります。また、街中で完全無線イヤホンを使っている人を見ていると、正しく装着できていない人が多いです。誤った装着方法だとちょっとした衝撃で落ちる可能性があるので、正しい装着方法を確認し、自分の耳にフィットするかを確認することが大切です」
また、イヤホンを線路に落としてしまうのは、「乗降時にケースから出し入れしていて手が滑るケースも多い」。超小型となればケースもイヤホン本体も小さく、うっかり落としてしまう危険もある。購入する際には製品を触り、耳にフィットするか、ケースは扱いにくくないかを確認すると、トラブルを防ぐことができるだろう。
(文 小沼理=かみゆ)
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