「ビジネスパーソンのお手本」ベルギーのフィリップ国王
中野さんと小谷氏が推すのは、ベルギー・フィリップ国王。60年生まれの59歳で、マチルド王妃らとともに洗練されたファッションセンスの王室一家で知られる。今年を含め5回来日している。「グローバルに通用する紳士のドレスコードをきっちり押さえた上で、ネクタイはダークカラーからオレンジなどまでそろえている。シルバーグレーの髪と美しく調和させている」と中野さん。小谷氏は「ベルギーに本社を置く世界的に有名なスキャバル社の高級服地を使ってビスポークで仕立てたスーツと分かる。シャツは一貫して白で、純白のポケットチーフも欠かさない。3ピークスや4ピークスを作り常に胸ポケットに刺している」という。着こなしやコーディネートは、そのまま我々ビジネスパーソンのお手本になると勧める。
オランダのアレクサンダー国王は67年生まれの52歳と、天皇陛下よりも年少の元首だ。2006年には皇太子時代のご一家を静養のために招くなど家族ぐるみの交友が深い。「トラウザーズの幅を太く、Vゾーンの長めにすることで余裕やゆとりを演出している」と中野さん。天皇・皇后両陛下との親しげな様子が注目を集めたデンマークのフレデリック皇太子は51歳。メアリー皇太子妃は民間出身だ。小谷氏は「ラグジュアリーブランドの既製品を品良く美しく着こなしていてメアリー妃とお互い引き立て合っている」とみる。
「即位の礼」ではアジア勢も異彩を放った。その代表格が、エリザベス英女王に次ぐ在位52年のブルネイ・ボルキア国王だ。石油・天然ガスの豊富な産出を背景に各国君主の中でも有数の資産家としても知られ、その若々しさは73歳には見えない。柴田音吉洋服店の柴田氏は「黒々としたあごひげに、白い軍服を合わせたシンプルかつ力強いコーディネートで、ぐっと見る人を引き付けた」と言う。
ボルキア国王の燕尾(えんび)服にはあふれるほどの勲章がついており、スーツも最高素材で作られているのが見た目で分かるという。その一方で中野さんは「スーツ姿でもイスラム教徒としてのアイデンティティーを示す帽子は欠かさない。西洋世界になじみきらない強さを主張している」としている。

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