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中小企業改革と賃上げで
生産性を高めれば
日本は再び輝ける

――ゴールドマン・サックスのアナリストとして1990年代から日本経済の分析を続け、日本の不良債権問題の実態を暴いたり、観光立国としての可能性を提起したりと、数々の実績を残してきたデービッド・アトキンソンさんの最新刊は『国運の分岐点』。副題は「中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか」とショッキングなものです。執筆のきっかけは。

90年に来日してから30年にわたり日本経済を分析してきましたが、今の日本の状況、そして未来に強い危機感を持っています。人口減少、高齢化による社会保障費の増大、自然災害リスクなど多くの試練に直面しているにもかかわらず、現状についての客観的な調査・分析が全くなされていない。

私は英オックスフォード大学時代から日本経済を研究し、日本文化にも長年親しみ、現在は日本の文化財を守るための会社の経営者を務めています。日本の素晴らしさも、潜在能力の高さもよく知っています。だからこそ、この未曽有の危機を前にして何の対策も打たない現状を黙って見ていることはできないのです。時代の変化に対応した、新たな国のグランドデザインを描く必要性を多くの人に理解してもらいたいとの思いで、この本を書きました。

――日本が低成長とデフレから抜け出せない原因として、人口減少と生産性の低さを挙げています。

経済成長は主に人口と生産性の2つの要因から成ります。日本は90年代から人口が減っているだけでなく、国際的に見た生産性の水準も大きく低下してきました。

日本で「生産性」というと、利益水準や残業時間の話だと捉えられがちですが、生産性とは通常、「国民1人当たりのGDP(国内総生産)」のことです。国際通貨基金(IMF)のデータを基に計算した日本の1人当たりGDPは4万4227ドル(2018年、購買力平価ベース)で世界28位。米国(6万2606ドル)やドイツ(5万2559ドル)を大きく下回り、先進国としては最低水準です。賃金水準も低迷しています。この20年間で先進国の給料は約1.8倍になっているにも関わらず、日本は9%も減っているのです。

一方で、技術力や人材の質では、日本は今も高水準にあります。世界経済フォーラムの人材評価ランキングでは、経済協力開発機構(OECD)加盟国中4位(16年)でしたし、国際競争力ランキングでは世界5位(18年)です。

――高い潜在力と低い生産性。その乖離の原因をどう考えますか?

まさにそれが、私がこの5年をかけて調査・分析してきたことであり、本書のテーマでもあります。結論を言うと、日本は中小企業が多過ぎるのです。より正確に言うと、小さい企業で働く人の割合が高過ぎて、かつ、大企業で働く人の割合が少な過ぎるのです。これが、生産性に関する様々なデータを分析し続けて達した結論です。

――どのようなアプローチで分析したのでしょうか。

生産性が日本と同様に低迷している先進国にスペイン(31位)とイタリア(33位)があります。

この両国は、国際競争力も30位前後です。日本は国際競争力が高いにもかかわらず、生産性は両国と同水準になってしまっている。そこには生産性が低くなる「構造的な共通点」があると考えました。

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