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「自己肯定感」を維持して明るく働く。画像はイメージ=PIXTA

「自己肯定感」を維持して明るく働く。画像はイメージ=PIXTA

「自己肯定感」は近年、やたらと目にする機会が増えた言葉だ。成長や共感に欠かせないといわれるが、養い方や生かし方が分かりにくい。『職場の人間関係は自己肯定感が9割』(フォレスト出版)を書いた工藤紀子氏は人間関係のトラブルを防ぐうえでも、自己肯定感の意味は大きい」という。尊大にも卑屈にもならずに済む「自分」との向き合い方を教わった。

そのままの自分を認めて受け入れる

やや乱用されている印象がある言葉だ。子育てをはじめ、人材活用や恋愛術などにも絡めて語られやすく、時には犯罪や他者攻撃の心理を読み解くのにも持ち出される。プライドや自己愛(ナルシシズム)とも混同されることがあり、日本ではまだ実像が定まっていない感じがある。工藤氏が代表を務める日本セルフエスティーム普及協会の説明によれば、自己肯定感とは「そのままの自分を認め受け入れ、自分を尊重し、自己価値を感じて自らの全存在を肯定する」という感覚だ。米国では以前からあったとされる概念だが、日本では臨床心理学者の高垣忠一郎氏が1990年代にこの言葉を提唱して広まった。

日本では登場からまだ30年に満たない割と歴史の浅い言葉だけに、「肯定」という字面の印象が災いしてか誤解を招いている面がある。「親はとにかく子供を褒めちぎるべきだ」「上司は部下を褒めろ」といった掛け声すら聞こえる。しかし、心理学者の榎本博明氏が著書『ほめると子どもはダメになる』(新潮社)で指摘したように、むやみな「褒め倒し」はむしろ逆効果にもなりかねない。工藤氏は「世の中の役に立っているという意識の自己効用感や自分の可能性を信じられる自己効力感などを含む複合的な感覚であり、ただの肯定ではない。まして何でも褒めるといった態度は望ましい肯定ですらない」と、正しい理解を求める。

過剰なまでに他者評価に反応してしまうと、「自分軸」がその都度ぶれてしまい、成長の妨げにもなりがちだと工藤氏は指摘する。必要以上に不安を感じてしまい本来の資質を発揮できなくなる事態は、本人はもちろん職場のチームや勤め先にも損失となる。他者からの否定的な評価を気にしすぎるのは、それをはね返すのに役立つ自信のなさが原因の一つだと工藤氏はみる。「少しの失敗で気持ちが折れてしまうのを防ぐうえでは、その人にふさわしい自己肯定感を保つ意味が大きい」(工藤氏)

しばしば起きる誤解は、傲慢や思い上がりまで自己肯定感に含めてしまうことだ。工藤氏は「単なる自分好きや『俺様主義』と自己肯定感は本来、別物」と断じる。増長や虚栄が混じり込むのは望ましい自己肯定感からはずれる。「本人価値をゆがめたりすごさをアピールしたりするのは、本来の自己肯定感の使い方ではない」という。

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