
続いて「ヒラメ昆布〆(コンブジメ)」。コンブで一晩しめたヒラメは、コンブのふくよかなコクとまろやかさをまとい、ねっとりした食感。甘みの余韻が長い。
ショウガとネギをあしらった「カツオ」は長崎県産。「この時期の長崎産のものは、脂ののったいいカツオなんですよ」と三橋さんもいち押しだ。
寡黙な三橋さんにシャリについてたずねると、「すしはネタとシャリとのバランスが大事。口に入れてかんで、同時になくなる感じがいいんです」。
コメは長野県産のコシヒカリ「幻の米」。甘みが強く、魚に合う銘柄を探し求めて出合ったという。
本ワサビは時期にもよるが、取材日は伊豆産。おろしたてを使うので風味がよく、辛みと同時に甘みもしっかりと感じられる。

ブリは脂がほどよくのった富山県氷見(ひみ)産。かむとサクッとした歯ごたえに、冬のブリならではの濃厚な風味が口中に広がる。そして脂がシャリを包み込み、スーッとなじんでとけていく。一瞬のことなので目を閉じて静かに味わいたい。
中盤は江戸前ずしといえば真っ先にイメージする「コハダ」。塩をふり2時間置き、塩抜きをして酢にひたすが、この塩出しの塩梅(あんばい)が仕上がりを左右する。
つまりこの塩梅が職人の腕というわけだ。酢にひたしたら2~3日そのままに。しっかり強めにしめるのが三橋さんの「コハダ」だ。
「タコ」は神奈川県三浦半島の佐島産。歯ごたえはあるが、軟らかさと甘さを併せ持つ上質なタコだ。歯ごたえを残しつつ食べやすいように、細かく入った隠し包丁が見事で、タコはかたくて苦手という人にこそ味わってもらいたい。