2019/12/9

それにもかかわらず、ライオンが1つの神に強く関連づけられることはなかった。トキがトト神、ジャッカルがアヌビス神と結びつけられたのとは対照的だ。今回サッカラで発見されたミイラは、ネコの女神バステトや、その姉妹で雌ライオンの頭を持つ戦いの女神セクメトと関係があるようだとロード氏は話す。

そして、特定の神や崇拝対象との結びつきがないことこそ、他の動物に比べてライオンのミイラの発見が極端に少ない理由かもしれないとも語る。

一方で、単にまだ見つかっていないだけではないかという見方もある。

「ライオンのミイラが少ないことについて、実践的な理由はまったく考えられません」とロード氏は言う。「古代エジプト人は、この大きさの動物なら完璧にミイラにすることができました。神の化身として崇拝されたアピスの雄牛は、臓器の除去といった最高の技術を使ってミイラ化されています」

ライオンのミイラは、雌ライオンの頭を持つ戦いの女神セクメトへの崇拝と関係があるのかもしれない(PHOTOGRAPH BY AGE FOTOSTOCK, ALAMY)

ライオンをミイラにする場合の唯一の違いは、肉食動物であるために臓器を取り出すときのにおいが強いことだと言うのは、数体のライオンのミイラをCTスキャンしたカイロ・アメリカン大学の考古学者サリマ・イクラム氏だ。

今回の発見は、古代エジプトでライオンがどのようにして捕獲されたのか、また繁殖や取引は行われていたのかについて、研究者に新たな洞察を与えてくれるものであり、「極めて重要」だとイクラム氏は述べている。

「サッカラの発掘が進むにつれ、ライオンのミイラがさらに見つかる可能性は大いにあります」とイクラム氏は言う。「古代の著述家たちがエジプトでミイラにされるライオンについて書いていますし、私も含めて何人もの学者がライオンの墓地を探し続けています」

(文 Antoaneta Roussi、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年11月26日付]