TRFのDJ KOO ヘッドホンは仕事のスイッチです
ダンス&ボーカルグループ、TRFのリーダーで踊れるサウンドの鍵を握るDJ KOOさん。近年は、バラエティー番組でもインパクトのあるルックスと生真面目でチャーミングな人柄でひっぱりだこだ。テレビ番組でも身につけているヘッドホンは、本業であるDJの必須アイテムだ。DJとして活動するきっかけの一つが、1977年に全米で公開され、全世界にディスコブームを巻き起こした映画「サタデー・ナイト・フィーバー」だったという。そんなDJ KOOさんは、ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」の公式サポーターを務める。映画のジョン・トラボルタよろしく、ラメ入りの白スーツを身にまとい、ヘッドホンへのこだわりを語ってくれた。
新製品が出ても結局は初期型に戻る
パイオニアのDJ用ヘッドホンシリーズを長く使い続けています。とくに、初期タイプのHDJ-1000が一番しっくりきますね。母体がシルバーのものがそれで、基盤がゴールドのものは、HDJ-1500。ゴールドと黒のデコレーションがシックでいいですよね。
それでも、新製品が出ると買って試します。今はすごくハイスペックで、音質がすばらしいヘッドホンもたくさんありますが、結局は初期型に返ることが多い。耳に当てるハウジングという部分の回転がスムーズで、DJするとき使い心地がいいんです。僕が一番気にしているキックドラムの音もよく聴こえます。
DJが、ヘッドホンの片方だけを耳にあてているのを目にしたことがあると思うんですが、あれは片方の耳でフロアに流れている音楽を聴き、ヘッドホンからは次に流す音を聴いているんです。主にキックの音を頼りに、フロアで踊るお客さんの足が止まらないよう2曲をつなげられるかがDJの腕の見せどころ。ですから、DJプレイやライブでヘッドホンのハウジングがよく回るかどうかは非常に大事なんです。
音も、最上級の音というより、フロアで流れる音に近いダイレクトなものが好きですね。ヘッドホンの中で素晴らしい音が流れても、フロアで聴いたときに「あれ、なんか違う?」となるのを避けるためです。
現在、20個ほど持っていますが、よく使うものは2~3に絞られますね。というのも、使い続けることで自分の体とヘッドホンの音や形がなじんでくるんです。
今のようにスワロフスキーのクリスタルでデコレーションしはじめたのは、TRFが20周年を迎えた6年ほど前から。基本的には1台を使い続けるタイプですが、だんだんとクリスタルが取れてくるので(笑)、そういった関係でリニューアルすることもあります。デコレーションは信頼してお任せしているところがあるんですが、毎回進化を感じますね。最近では、石の粒の大小を織り交ぜて立体的に見せたりする工夫に驚かされました。
僕は、19歳から約40年近くもDJを続けていますが、それもこれも映画「サタデー・ナイト・フィーバー」のおかげじゃないかなと。あの映画が若者文化を変えたし、ダンスシーンやDJカルチャーをしっかりと見せてくれた。サントラによって、ディスコミュージックが広く浸透したことも大きかったですね。あの映画に、僕の人生の原点があるなと感じます。
映画では暗い部分も描かれていますが、だからこそ土曜日の夜はおしゃれな服を着て一夜限りのスターになるという対比がより鮮やかに見えた。ディスコシーンがより華やかで非日常的に映ったと思うんです。日本でも、あの世界観に魅せられた人はたくさんいたし、それを求めた。映画以前のディスコは豆電球みたいなものがついただけの、暗くてあまりいいイメージじゃない場所でした。そこにミラーボールが取り付けられ、床が光り始めた。革命が起きたんです。
僕の家にも、ミラーボールや光る床があるか……ですか? さすがに、それでは娘が勉強できないのでありませんよ(笑)。そうやって、みんなで騒げるパーティールームがあると楽しいでしょうね。でも、それより20歳になった娘のために、もっと広い勉強部屋をプレゼントしたい。大きなこと言えば、新しい家を買いたいのですが、そのためにはさらに頑張らないとですね。
きょうのように、スーツに袖を通すと気分が変わります。仕事や冠婚葬祭ではなく、おしゃれでスーツを着るという発想もかっこいいですよね。僕にとってヘッドホンは、映画のトラボルタにとってのスーツのようなもの。ヘッドホンをすると、スイッチが入るし安心できる。だから必要もないのに、バラエティー番組でもしているんです(笑)。
今、首にかけているのは夏から使い始めた最新作。この白いスーツにも映えるし、夏のフェスやイベントでも大活躍しました。近年は、世界的なEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)ブームもあってDJの活動の場が広がっていると感じます。僕も、令和の夏は盆踊りやアイドルの皆さん、ゲームコンテンツなど、様々なコラボをさせてもらいました。
僕自身、コラボさせてもらうまでは盆踊りは地域のお祭りでちょっと地味なものと思っていました。ですが、DJをやりはじめてからは、イメージが180度変わったし、世代も国境も越えましたね。2年ほど前に、Nameweeさんというマレーシアのアーティストさんから、「J-POPをリスペクトしています。ぜひ一緒に『BOY MEETS GIRL』の盆踊りリミックスを作りませんか」と声をかけてもらいました。聞けば、マレーシアでは盆踊りが非常に盛んなのだそう。実際に、TRFの曲を盆ダンス用にリミックスして、それに合わせて踊る方々を目の当たりにしたときは、DJの新たな可能性を感じましたね。アイドルやゲームコンテンツとのコラボでも同じように、今までにない広がりを感じました。
この秋は「ラグビーワールドカップ2019」のパブリックビューイングでDJをやらせてもらいました。実は、高校3年間ラグビーをやっていたこともあり、数年前から試合会場でDJをやらせてもらっていたんです。
こうしていろいろとお声をかけていただけるのも、DJとしてずっと現場に立ち続けてきたからだと思うんです。来年はDJとしてデビューして40周年の節目を迎えますし、「TOKYO 2020」で海外からいらしたたくさんの方々の前で、盆ダンスのDJをやりたいですね。その際には、ぜひ五輪マークをデザインしたヘッドホンを新調したいと思っています(笑)。
1961年8月8日生まれ、東京都出身。19歳から東京・新宿のディスコでDJを始める。1986年に、世界的に著名なDJ HONDAらとリミックスチーム・THE JG'sを結成。1992年にTRFを結成、翌93年にデビュー。リーダーを務めるほか、DJやラップ、サウンドメイクなどを担当。11月6日に洋楽ヒットを集めたアルバム「KING OF PARTY mixed by DJ KOO」をリリースした。
ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」
1977年全米公開(日本公開は78年)の大ヒット映画「サタデー・ナイト・フィーバー」を、ビル・ケンライト演出、ビル・ディーマー振り付けで舞台化。ローレンス・オリヴィエ賞をはじめ数々の賞に輝くマシュー・ボーン作品に多数出演する、リチャード・ウィンザーが主演を務めることも話題のミュージカル。12月13日~29日に東京国際フォーラム・ホールCにて上演。
(文 橘川有子、写真 藤本和史)
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