2019/12/4

――いわゆる「就活の軸」そのものはあまり重視されていないという事実は、学生には衝撃かもしれません。軸と同じようによく聞かれるのが「やりたいことは何ですか」だと思います。どんな反応をみるのでしょうか。

Bさん 私の会社だと、やりたいことはいろいろあると言ってくれたほうがうれしいです。あるひとつのことに担当の社員より詳しいくらいこだわりのある学生も評価するし、なんでも興味ありますという人もいいと思う。企業はある程度バランスがないと成り立ちませんから。

「やりたいこと」を聞くのは何のため

――「会社でやりたいこと」を定める必要はない?

Cさん いろいろな業界を受けていますという学生さんの話は、面白いなと思って聞きます。理由を尋ねると、その人の考え方がわかってきて、うちの会社に入ったらこんな風に活躍できそうだなと想像できますから。

Dさん 学生がやりたいことを決めなきゃいけないと思っているのは、質問されるからですよね。僕はやりたいことは質問しません。そもそもわからないと思っているから。配属についても入社の時点で「この仕事をずっとやってもらいます」とは言えないわけですよ。営業志望だけれど、他の仕事をやらせたらもっと活躍するかもしれないし。一般的になぜやりたいことが聞かれるかというと、会社側が単純にどのくらい強く志望してくれているのかを測りたいだけだと思っています。本気で志望していれば会社の中のことをちゃんと調べてくるだろうし、それは答えにも反映されますから。

Aさん 聞いていてちょっと反省しました。自分たち企業側もダメだなあと。直接的な答えを求めていない質問をしていることになりますから。「やりたいことは?」と聞かれたら、学生は必死で答えますよね。でも、本当はこっちが聞きたいのは「やりたいこと」ではない。それじゃあ、学生も迷いますよね。

学生3 本当は学生のベクトルの「向き」と「太さ」のようなものを見ているのかなと理解しました。

Fさん そう! すごくいい説明だなあ。そういうことです。軸とかやりたいことで聞いているのは、まさに「うちの会社に入ったらどういうふうに活躍できるかな」ということなのです。

「就活の軸」に関する議論をまとめたグラフィックレコード(協力=dot)
■「1本の軸」に縛られないで(安田編集長)
「化かし合いですよね」。この言葉を就活の取材中に何度聞いたかわからない。学生は様々なセミナーや対策本、先輩・友人の口コミから情報を集め、どんどん「武装」していく。ある採用担当者は「学生が『就活の軸は3つありまして……』などと話し始めた途端、どうやって化けの皮をはがそうかと考え始める」と語っていた。
座談会では企業側が「軸」という曖昧な言葉を投げかけ、それをきっかけに様々な角度から質問し、相手がどんな考え方の持ち主なのかを探ろうとしている姿が浮かび上がった。つまり曖昧だから「軸」なのだ。
あえて「軸=その人らしさ」と考えるなら、むしろ複数あった方がいい。ある経営者から「良きリーダーの条件は矛盾した二面性を持っていることだ」と聞いたことがある。数が多すぎては軸と呼べないかもしれないが、むりやり1つに絞り込んではつまらない。「1本の軸」を考えすぎて、就職先の選択肢や自分の可能性をせばめたり、自分には軸がないと自信をなくしたりするのだけはしないでほしい。

(取材・構成 藤原仁美)

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