コペンGRスポーツ スキのない軽オープンカーに進化

2019/12/15
トヨタとダイハツがタッグを組んで開発したスポーツカー「コペンGRスポーツ」(写真:荒川正幸、以下同)
トヨタとダイハツがタッグを組んで開発したスポーツカー「コペンGRスポーツ」(写真:荒川正幸、以下同)
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「コペンGRスポーツ」は、トヨタのGAZOO Racingカンパニーとダイハツがタッグを組んで仕立てたスポーツカーだ。その出来栄えを試すべく、特設コースに乗り込んでステアリングを一発切ったリポーターは、思わず笑みをこぼしたのだった。

「コペン」のベース市場を拡大したい

最初はまったくピンとこなかったが、トヨタらしい強引な力業で、いつしか直系スポーツブランドとして世界的に認知させることに成功したGRである。GRはWRCやWEC、ダカールラリーなどのモータースポーツ頂点カテゴリーでも使われるが、われわれに身近なのは「アクア」や「ヴィッツ」から「ヴォクシー/ノア」にまで設定されるスポーツモデル「GRスポーツ」だろう。GRスポーツはいくつかのレベルがあるGR銘柄の市販車でも、価格がもっとも手頃で、非限定商品であることが特徴だ。

そんなトヨタ謹製ブランドを、初めて他社製品(ダイハツは完全子会社だけど)に冠したのがコペンGRスポーツだ。ダイハツとトヨタのダブルネーム商品となるが、開発の実作業はあくまでダイハツの手によるもので、トヨタ側のGRカンパニーは企画段階から味つけにいたるまで意見を出して、一部に独自の知見を提供する役割を果たしたという。

今回の試乗会に出席したダイハツ技術開発部門トップの南出洋志さんは「『コペン』のベース市場を拡大したい」と語った。コペンには有名ブランドパーツで要所を固めた「S」がすでにあるので、それ以上……となると、たとえばNISMOやSTIといったモータースポーツ的な世界観を与えるのがテッパンである。

ただ、公式なモータースポーツ活動をおこなっていない今のダイハツには、それに好適なブランドがない。いっぽうのトヨタ=GRの商品群でいうと「スープラ」や「86」よりもハードルの低い小型スポーツカーはあるに越したことはない。軽自動車のGRなんて今の時代いかにも売れそうだし、それをダイハツがつくってくれたら都合がいい……というわけで、コペンGRスポーツである。

ただ、コペンはダイハツの精神的フラッグシップであり、マニア間には「スポーツカーは自前でやるべし」なる原理主義的な声が根強いのも事実。しかし、こういう思いつき企画を“善は急げ”とスパッと実現してしまうノリの良さは、素直に最近のトヨタの美点と思う。

ナンバープレート周辺をブラックパーツで飾ったリアバンパーも「GRスポーツ」専用装備だ

シャシーまわりが主体のチューニング

GRスポーツには中身にまつわる約束が一応あって、それは、パワートレインは標準のまま手をつけず、車体やシャシーの補強、そして内外装のモディファイにとどめる……というものである。で、今回のコペンGRスポーツも基本的にはその約束にのっとっている。

コペンGRスポーツのエクステリアは既存の「ローブ」をベースに前後バンパーを専用化したほか、リアタイヤ前方の床下に専用空力部品のスパッツがつく。車体強化はいかにもGRスポーツらしく、床下を中心に“ブレース(=補強部材)”を追加する手法である。今回は、フロントサブフレームと車体中央部メインフレームとを結合するブレースと、既存のリアブレースを同じく中央メインフレームと結合させるブレースが主な新規部品となる。

リアタイヤ前方の床下には専用空力パーツのスパッツが加えられている。リアタイヤ周辺の空気を整流することで接地感を高めている

この種のチューニングモデルのシャシー開発では、まず高性能タイヤを専用に履かせるのが常套手段だ。GRサイドの担当者である南 輝之さん(トヨタマンなのに、初代コペンを新車当時からずっと乗り続けているとか!)も「当初はもちろんタイヤ幅を広げることを検討したのですが、そもそもコペンに装着可能なサイズは実質的にこれしかありませんでした。とくにリアはこのサイズが限界。ただ、もともとの『ポテンザRE050A』はとてもいいタイヤなので、これをさらに使いこなすことにしました」と語った。

というわけで、GRスポーツでもタイヤは銘柄もサイズも標準と変わらず、BBSのアルミホイールはSと共通としたうえで、スプリングやダンパーを専用化している。ちなみに、GRスポーツのダンパーはKYB製だが、標準コペンのそれはショーワ製、Sは知っている人も多いようにビルシュタイン製である。

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