直線的キャリアにはない「寄り道」の強み

「PVに関しては私よりも経験や知識が豊富なスタッフもいるなか、その人たちをどう束ねていったらいいかと考えると不安でした」と福士さんは語る。しかも、合弁会社には外資系のPRAヘルスサイエンス、武田、武田の子会社と3つの異なる組織から社員が送り込まれることになっており、マネジメントの難易度は高かった。

最初はためらっていた福士さんだったが、「しっかりとサポートする体制を作るから」という当時の上司の説得を受けて、考えを変えた。「やったことがない仕事に不安を感じるのは当然のこと」と昇進を前向きにとらえられるようになり、マネジメントに挑戦することを決めた。

PRAが全株式を買い取る形で、合弁会社は19年6月からPRAの完全子会社となったが、福士さんは引き続き部長職として、得意の英語を生かしながら、毎週のように開かれる海外との電話会議をこなすなど活躍している。

マネジメント経験ゼロだったが、今では約150人の部を率いるリーダーだ

同じ武田の出身で現PRAヘルスサイエンス社長の小川淳氏は、「福士さんを部長に抜てきしたのは、異なる3つの組織が1つにまとまる変革期のリーダーとして、これまでの延長線上ではなく、新たな視点で前向きに組織を引っ張っていってくれるのに最適だと判断したからです」と語る。

「社内屈指の英語力」(広報)に加え、薬局で働いたり、派遣社員として勤務した経験などから、相手の立場に立ってモノを見たり、考えたりする姿勢が自然と備わっているのも、福士さんの強みだ。上下関係による力業で組織を率いようとするのではなく、自然体で周りと協力関係を築きながらリーダーシップを発揮している福士さんの姿を見て、「人間としての懐の深さも感じる」と小川氏は言う。

福士さんのようなアルムナイは、企業にとって貴重な眠れる資産。そうした認識の広がりから、離職した元社員を呼び戻そうとする動きも盛んになっている。

出産、育児や配偶者の転勤などに伴い離職せざるを得なかった元社員を再雇用する制度は以前からあった。対象者の範囲を広げるなど、制度を積極活用しようとする動きが広がる背景には、「即戦力として期待できる」「人となりがわかっていて安心」などの理由がある。社外で培った経験を生かし、社内に新たな視点を持ち込んでくれる存在としてのアルムナイへの期待の高まりもある。

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相次ぐアルムナイ呼び戻しの取り組み