衣類スチーマー アイロン追い越す勢い、手軽さに評価
大河原克行のデータで見るファクト
アイロンの売れ行きに変化が起こっている。従来型のアイロンの販売比率が年々縮小しており、代わって衣類スチーマーの販売比率が増加しているのだ。東芝ホームテクノの調べによると、2014年には12%の構成比だった衣類スチーマーは、2018年には44%にまで拡大しており、2019年には46%の構成比に達すると見込まれている。市場の半分近くが、衣類スチーマーになっている。
アイロン掛けは、手間がかかる家事のひとつに位置づけられており、嫌いな家事のひとつにもなっている。アイロンの準備が面倒であるといった声や、片づけに手間がかかるという不満の声も多い。
東芝ホームテクノの調査でも42%の人が、アイロン掛けは、準備が面倒だと回答している。
その点、衣類スチーマーは、アイロンほど準備に手間がかからない。
サっと取り出して、短時間で作業を開始できる。パナソニックの衣類スチーマーでは、電源を入れてから、約24秒で利用が可能だ。そして、衣類スチーマーならば、アイロン台を用意する手間もいらず、シャツをハンガーにかけたままたシワのばしができる。
パナソニックによると、衣類スチーマーの購入者のうち、「衣類のシワとり家事が、以前より好きになった」とした人は男性では31%、女性では32%。「好きではないが、以前より楽になった」という回答が、男性では56%、女性では54%に達したという。東芝ホームテクノの調査でも、「シワのばしは衣類スチーマーで十分満足している」という人が25%に達した。
また、アイロンと同様に、かけ面を使って、ズボンやハンカチをプレスし、折り目をつけることもできる。
「アイロン掛けでスジをつけてしまう」という人が22%(東芝ホームテクノの調査)おり、これも衣類スチーマーで解決できる。
パナソニックでは、「シワは分子が水素結合した状況であり、スチームなどの水分によって、水素結合が切れ、そこに、重さなどで衣類に力が加わると、繊維がきれいに並び、熱によって、再び分子同士が水素結合することでシワがのびる仕組み。衣類スチーマーは、シャツならば、10センチの幅を約3秒という速度でゆっくり動かせば、誰でも失敗せずにシワを伸ばすことができるという」とする。
さらに昨今では、イージーケアの衣類が増加しており、これも簡単に使える衣類スチーマーの需要拡大に影響しているとの指摘もある。
脱臭や除菌にも効果
加えて、スチームには、脱臭効果もある。
パナソニックでは、焼肉などの飲食臭やタバコ臭や汗臭、防虫剤臭、加齢臭に加えて、新たに衣類についた生乾き臭とペット臭の脱臭効果を実証し、衣類の気になる7つのニオイに対応した。
「繊維表面や内部に存在するニオイ粒子を、スチームの熱と勢いで除去することができる」(バナソニック)。
さらに、ダニ由来アレル物質や花粉アレル物質を低減する効果、除菌効果もスチームの特徴だ。
冬場には、ジャケットやコート、ニットなど厚手の衣類にスチームを利用するユーザーが多く、クリーニングに出せない衣類を、スチームで毎日きれいにするという使い方も多い。
東芝ホームテクノの調査では、68%の人がジャケットに衣類スチーマーを使用。コートでは46%、ニットでも39%の人が衣類スチーマーを利用してケアしているという。
このように、アイロンよりも衣類スチーマーを使うことが増えている要因はいくつもある。
タンク容量を増やしたパナソニック
衣類スチーマーへの市場参入も増えており、ユーザーにとっては選択肢が増えているのもうれしい。
この分野でトップシェアを誇るパナソニックは、2013年に同社が衣類スチーマーを発売して以来、初めて本体形状を大幅に見直し、ポンプや電源部品を再配置してタンクのスペースを確保した「NI-FS750」を発売。タンクに入る水の量を倍増させている。
その一方で、本体サイズは約6%アップに抑え、さらに本体の高さを約2センチ低くし、重心の位置を本体の中心におく低重心設計を採用することで、使用中の腕への負担を抑え、約100ミリリットルの水が入った状態でも使いやすくしている。従来製品では、使用者の半数近くが、1回以上、水の継ぎ足しをしていたが、タンクの大型化により、一度の注水でより多くの衣類のシワが伸ばせるようにした。
コード付き、コードレス両面で攻める東芝
「La・Coo S(ラクーエス) 」ブランドで衣類スチーマーを投入している東芝ホームテクノでは、コードレスタイプの「TAS-X5」と、コード付タイプの「TAS-V5」を発売。前者は、「少ない量を手軽に毎日ササッとと仕上げたい」という忙しい共働き世帯、就活生、少人数世帯に最適な製品だとし、後者は、量をまとめて仕上げたり、大きなシーツなどもしっかり仕上げたいという人に適した衣類スチーマーだとする。
いずれも、すべりのよいニッケルコートをかけ面に採用。ハンガーに掛けた状態の衣類にスチーム当てて使うときも、アイロン台を使ってアイロンとして使うときにも、衣類の表面をより軽く動かせる。アイロン台の上では指一本でも動くなめらかさだ。また、スチーム孔の数を14個に増やして、スチームを広い範囲に行き渡らせる。
パナソニックの調査によると、シワシワな服を着ている人に対する印象では、「清潔感がない」が84.4%となり、次いで、「オシャレじゃない」が45.4%、「仕事ができなさそう」が45.2%、「貧乏そう」が44.0%となっている。
衣類のシワだけで、印象が大きく変わってしまい、シャツのシワだけで、仕事ができなさそうとも思われてしまうわけだ。オフィスや訪問先でマイナス印象を作らないためにも、手軽な衣類スチーマーを使ってみてはどうだろうか。
(ライター 大河原克行)
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