玉城ティナ 「想定外の役にワクワク、ベスト尽くす」
今年公開された映画の『Diner ダイナー』では殺し屋専用の食堂で働くウエイトレス、『惡の華』では異質な存在の中学生。超個性派の役柄が続き、見る人に強烈なインパクトを残す玉城ティナ。モデルから女優へと進出した彼女が目指すものとは?
14歳だった2012年に女性誌『ViVi』の専属モデルとしてキャリアを踏み出した。14年から女優として始動、18年に映画『わたしに××しなさい!』で初主演。19年は、1月公開の『チワワちゃん』ほか、4本の映画に出演した。蜷川実花が監督した『Diner ダイナー』で、殺し屋専用の食堂で働くヒロインを宙づりや水浸しになりながらも体当たりで熱演。9月に公開された『惡の華』では、伊藤健太郎演じる主人公に主従関係を持ちかけるエキセントリックな女子中学生役に挑む。公開中の『地獄少女』で地獄の使者である主人公を演じるなど、ダークな世界観で輝く個性的な役柄で、存在感を示している。
「『惡の華』は16歳くらいの頃に原作を読んでいたので、仲村佐和という個性的な役どころは演じがいがありそうだなと感じました。中学生時代を中心に演じましたが、そこはあまり意識しなかったですね。それよりも仲村はキャラクターが優先される役だろうなと。セリフも一般的にはあまり口にしない言葉が多かったので(笑)、そこをどう言おうかとか、立ち姿や目線についても考えました。
教室で春日(伊藤健太郎)の後ろに座る仲村が最初に映るシーンは、作品の重要なキーワードである『クソムシ』につながるところ。姿勢をぐちゃっとさせて目線も一点を見つめ、『この子、何を考えているんだろう』と思わせて、そこから物語が始まっていく感じを出せたらいいなと考えていました。
叫んだり教室をめちゃめちゃにするような激しいシーンは、流れというか気分で乗り切れた感じです。むしろ、仲村の芯の部分や弱さ、共犯関係にある春日だけに見せる顔はどれが正解なのかに悩みましたね。すごくエキセントリックな子だけど、お客さんから遠い存在には見えてほしくなかったので、ちょっとしたしぐさでかわいらしさや無邪気さを出せるように意識しながら演じました」
想定外の役はワクワクする
不思議な役柄も多いが、本人は理路整然と話す知的な女性だ。個性的なキャラクターで独自のポジションを目指そうとしているのかと思いきや、そうではないと笑う。
「今年の映画に限っては、クセの強いキャラクターばかりですが、意図して続けているわけではないんです。急に皆さんが私のそういう(ダークな)部分に気づきだしたというか(笑)。でも、我の強いキャラクターを当てはめようと思ってもらえたということは、私自身は意外と色が付いていないのかなと感じたりもします。強い役柄で名前が上がることはうれしいことですし、振り返ってみれば普通の女子高生や学生の役もやらせてもらっていて、今の私がある。今後はもうちょっとそれを伝えられるといいなと思っています。
迷ったり悩んだりすることはたくさんありますが、どんな感情もフルに活用できるこの道を選んだことを、今はとても幸せに感じます。でも、始めたばかりの頃は年齢的にも精神的にも理解が追い付かず、『演技は向いてないのかな』と思った時期もありました。ただ、芸能コースがある高校だったので、周りがどんどん女優としてキャリアを重ねている時、なぜ私はお仕事ができないんだろうと疑問を感じて。周りにつられるようにして『私も女優をやらなきゃ』という意識が高まっていった気がします。
高校を卒業し、このお仕事一本でやると決めてからちょっとずつ向き合い方が変わりました。いまだに『女優さん』というのは気恥ずかしかったりしますが、そんなことは言ってられません。同世代には活躍する女優さんがたくさんいて、刺激をもらえますから。同じ椅子を取り合うことはできないので、それぞれ違う椅子を設けられればいいなと思うし、自分もそれを目指してやっていきたい。
想定外の役をいただくと、監督さんはなぜ、この役に私を当てはめようと思ったんだろうとすごくワクワクします。『この役をやるの?』という驚きや、それを実際にどう演じるかは自分の成長にもつながると思うので。自分で自分の引き出しを開けて見せびらかすことはできないので、監督さんやプロデューサーさんの『玉城のこういう部分をマッチさせたらどうかな』という真剣な提案、意味のあるものに対してベストを尽くすしかないのかなと思っています」
(ライター 橘川有子)
[日経エンタテインメント! 2019年11月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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