好きでやっているので努力したという意識はない

存在するとはいわれながらもブラックホールの立証は難しかった。光さえも吸い込んでしまう強烈な重力のために目で見ることは不可能。08年、米国のチームが「ありそうだ」という論文を出したことに刺激を受け、「ぼくらも世界の研究者と一緒にやった方がいい、と決断して、日本のチームをつくって行動を起こしたのがプロジェクトのはじまり」。そしてブラックホールの撮影にチャレンジすると決めた。

「1兆分の1秒という精密さが要求されると言いながら、会議に遅刻したりするんですから(笑)」。偉大な研究者がおちゃめな一面も併せ持つ 撮影:筒井義昭

宇宙を仕事にするくらい「宇宙好き」な研究者にとって、「ブラックホールくらい興味をそそる変わり種はありません」。そんな「へんちくりんなやつ」が見えるかどうかというテーマが目の前に横たわっていたら、あきらめるはずがない。「情熱を持ち続けられたのは不思議な天体、ブラックホールのおかげなんです」

世界中の研究者とチームを組んで協力するとはいえ当然、内部ではライバル意識も生まれる。ただ自己主張を持った強烈な欧米の学者と違い「日本人は和を重んじ、みんなの意向をふまえながら、ある種の落としどころを見て行動する。だからプロジェクトの中でうまく立ち回れる」。1人が暴走するとだれもついて行けなくなる。本間さんら日本のチームは時に「和」という日本人の特性を生かし、全体のまとめ役としての機能も果たした。

世界にある8台の電波望遠鏡を連携させて巨大な望遠鏡として使用し、撮影に挑んだ。天体周辺からの電波の波面は1兆分の1秒という精度で追いかけられないと信号が処理できない。異なる地点の望遠鏡を連携させるには時計も1億分の1秒、10億分の1秒といった単位で正確に時刻を合わせる。先端技術を使った超微細な数字の正確さと格闘する一方で、10年間地道に挑戦し続けた。「10年間頑張って努力した、という意識はあまりないです。好きで、これを見たいという思いでやっていますから。苦労はあっても突破できたら次に何か得るものがあるはずだと、楽観的な予想でやっています」

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ブラックホールの次は「宇宙人を探す(笑)」
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