Men's Fashion

ブラックホール撮影、チームの「和」が成功に導く

SUITS OF THE YEAR

国立天文台水沢VLBI観測所所長・教授 本間希樹さん

2019.11.27

日本経済新聞社デジタル事業 メディアビジネスユニット「NIKKEI STYLE Men’s Fashion」と世界文化社「MEN’S EX」が共催する、「ビジネスや自分のフィールドで情熱を持ってチャレンジし、時代を変えていく才能や志を持つ人」を表彰するアワード「SUITS OF THE YEAR 2019(スーツ・オブ・ザ・イヤー)」。2回目となる授賞式を11月7日(木)PALACE HOTEL TOKYO(東京都千代田区)にて開催しました。それぞれの分野で活躍する受賞者6人の横顔を紹介していきます。




イノベーション部門の受賞者、本間希樹さんは岩手県にある国立天文台水沢VLBI観測所所長・教授。2019年4月、世界の200人以上の研究者とブラックホールの輪郭を撮影することに成功し、世界中の称賛を浴びた。テレビ出演や講演の要請が増え、今年はスーツを着る機会が例年になく多かったという。

ブラックホールって「へんちくりんなやつ」

初のオーダーメードスーツの着心地は「体にぴたりと合うと、こうも違うのか」と新鮮な驚きだった。「自分の体に合わせて職人のみなさんが仕立てていく、プロフェッショナルな世界に感動しました」。好奇心旺盛な研究者らしく、生地を選んだり採寸したりといった過程にわくわく感を覚えたという。「奥行きの深い服飾のプロフェッショナルな世界を垣間見て、勉強になりました」と話す。

お堅いイメージの理系の学者さんとは一線を画す、にこやかさ。今は学者も自分の研究を伝える言葉を持っていないといけない、と話術が巧みだ。「ブラックホールって何、と聞かれたら『へんちくりんなやつ』と答えます。一方通行の穴。入ったら出てこられないよ、と言ったらいいでしょうか」

おちゃめな面もある。撮影に成功した日は験を担ぐために、朝食に穴の開いたチョコレート味のシリアルを食べ、データ解析に疲れたらおやつが必要だからと、ドーナツなど穴の開いたスイーツを買い込んでいた。そしてその日の夕刻、徹夜するぐらいの心持ちで、観測所の上の部屋でメンバーたちと解析をはじめたところ、30分ほどして、ついにブラックホールの輪郭が確認できた。本間さんはガッツポーズ、周りは拍手喝采。10年をかけた、200人の研究者の情熱が実を結んだ瞬間だった。