企業文化を進化させる法則 決め手は「少数」の行動に『最高の企業文化を育む「少数」の法則』監訳者に聞く

自分や家族の「文化」も変えることができる

三井健次氏(撮影:山下裕之)

企業文化というと、経営者や人事部門の責任者が考えるべきことで、一般のビジネスパーソンには縁遠く思えるかもしれません。しかし実は、組織や自分の文化について考えることは、日々の仕事や生活をより良いものにするためにも有益です。

コンサルティングの現場では、社員の方々に自社の文化について聞くことがあるのですが、たいていはバラバラな答えが返ってきます。社外の人間から見るとものすごく独自の文化をもっている会社であっても、社内の人たちはそのことを意識していないのです。

文化とは無意識のうちに繰り返されるパターンとか物事の優先順位のようなものです。新卒で入社して、そのまま40代、50代まで勤め続けていると、組織内の「常識」に何の疑問も持たなくなります。だから、自社の文化がユニークなものであっても、そのことに気づけなくなってしまうのです。

同じことが、自分が所属している部署やチーム、個人の文化についても言えます。「あなたの特徴は?」と聞かれたときに、周囲の人たちが認識している客観的な特徴をきちんと答えられる人はなかなかいません。

その意味で、本書は「自分の文化」について考えて、自分の文化を相対化するために有効だと思います。「うちの会社ではこういうものですから……」というところで思考停止に陥るのではなく、相対化して自分の行動パターンを見つめることができれば、人間としての幅が広がるはずです。特にこれからのビジネスパーソンは、異文化とのコミュニケーションが求められる機会が増えるでしょうから、「自分の文化」を正しく認識することは、仕事や生活のパフォーマンスを向上させるために大いに役立つと思います。

その会社で、私たちのコンサルタントの一人が役員秘書に消しゴムを貸してほしいと頼んだところ、その秘書は優しく微笑み、机の引き出しから大きなハサミとすり減った消しゴムを取り出すと、消しゴムを半分に切った。そして大きい方をコンサルタントに手渡した。会社の核となる形質をこれほどはっきり示す行動はそうそう見られるものではない。
(同書第2章 「重要な少数の形質」より)
三井健次
本書の監訳を担当。PwCコンサルティング合同会社の常務執行役、パートナー、ストラテジー&日本リーダーとして、コンサルティング業務に携わる。東京大学工学部を卒業後、野村総合研究所、ブーズ・アンド・カンパニーを経て現職。本書の共著者(ジョン・カッツェンバック氏)が創設した組織文化の研究機関カッツェンバック・センターは、現在はPwCストラテジー&の傘下で活動を行っている。

最高の企業文化を育む「少数」の法則

著者 : ジョン・カッツェンバック, ジェームズ・トーマス, グレッチェン・アンダーソン
監訳者 : PwC Strategy&
訳者 : 野中香方子
出版 : 日経BP
価格 : 2,200円 (税込み)

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