スマホで自宅の鍵開閉が自在 月額360円で工事不要
日経トレンディは12月号で「2020年ヒット予測ランキング」をまとめた。注目の商品として16位に選んだのが「ビットキー」だ。スマホ操作で鍵の開閉が操作できる装置だ。
スマートキーが大衆化
今はまだアーリーアダプター(新製品を初期に採用する顧客層)しか使っていない次世代スマートロックが、20年には一気に広まる。けん引するのは、ベンチャー企業のビットキーだ。
ビットキーの最大の特徴は、初期費用無し、月額で360円、年プランなら3600円(いずれも税別)という圧倒的な安さ。一般住宅向けの「ビットロックLITE」は、工事無しで自宅の鍵に設置できる。ローンチから4カ月で10万台の契約を取り付けた。CEOを務める江尻祐樹氏は「20年中には累計100万台の契約を目指す」と言い、スマートロックの利用者が爆発的に増えそうだ。江尻氏は「20年年始には顔認証による鍵の開錠機能も提供予定」とも語り、付加価値がさらに高まる。
ビットロックが普及すると、さらに次の展開がある。「ビットキーは将来的に、鍵の開け閉めの権利を譲渡するビジネスモデルを目指す。あくまでスマートロックはインフラ。最速で配りまくり、そのうえで様々なサービスを展開してマネタイズする」(江尻氏)。
なかでも注目は、物流クライシスを抱える宅配業界だ。再配達過多は世界的な問題になっており、アマゾンは米国で「Key by Amazon」という、配達員が一時的に開錠して荷物を届けるサービスを展開。ビットキーは物流大手セイノーホールディングスの子会社ココネットと提携し、電子上の鍵を使って不在時に配達を行う同様のサービスを試験的に導入した。
家事代行や水道管の修理などの受け入れにも活用できる。鍵を一時的に開けるビジネスは社会的要請が強く、日中に家を空けているディンクスや一人暮らしのユーザーが飛び付きそうだ。
実は20年は、クルマのスマートロック化も進む。19年10月、国土交通省が保安基準を見直し、クルマの鍵をデジタル上で管理することが解禁された。既に海外では導入されている、スマホでクルマの鍵を開け閉めするサービスが使えるようになるのだ。後付けの車用スマートロックが発売される可能性も高い。
「ビットキーは、クルマメーカーとの提携も視野に入れている。家の鍵とクルマの鍵を同じスマホで施錠・開錠できれば、利便性は一気に上がる。レンタルやカーシェアの鍵の受け渡しもスムーズになる」(江尻氏)。
外出時に必ず持ち歩く家の鍵がスマホと合体。キャッシュレスに続いて「キーレス」社会が訪れる。
[日経トレンディ2019年12月号の記事を再構成]
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