「さやけさ」とは「澄みきった美しさ」のこと。今西校長は、甲陽として初の卒業生校長だ。「恩返しの気持ちを胸に、『清き泉の番人』になって微力を尽くすつもり」と言う。清き泉がなければ、銘酒も名士も育たない。

「劇的な改革よりも地道な改善」が甲陽流

「いまあるものを調整しながら新時代にも適応させていく。ハード面でもシステム面でも、それが本校の基本姿勢。劇的な改革よりも地道な改善に価値を置く文化が甲陽にはあります」と今西校長。一方で、「伝統」と「惰性」の区別が難しいとも今西校長はもらす。さまざまな行事で「おふざけ」が行われるのが甲陽の校風でもあるのだが、悪ノリが目立ってしまうこともある。

名物行事「耐寒登山」のゴールのあと、教員も生徒もいっしょになって有馬温泉の日帰り湯につかるというのはたしかに長い間ひとつのお約束になってはいるが、ここ数年、そのまま温泉宿に宿泊する生徒もいるという。一部の生徒はそれを勝手に「伝統」と呼んでいるが、「高校生が決して安くない有馬温泉の宿に泊まるなんて、ここ数年の悪ノリであり、甲陽の伝統ではない」と今西校長は言い切る。

ほかにも秋に行われる高校の「音楽と展覧の会」(文化祭)の一環として実施される「合唱コンクール」で、まじめな合唱の前に、高3がコントのような寸劇を披露するのがはやった時期があった。審査員を担当する保護者もそれにつられて、寸劇の面白さで得点を付けてしまい、合唱コンクールの趣旨が損なわれる事態にまで発展した。生徒と教員が話し合い、これは自粛してもらうことにした。

「それは惰性か伝統か」。生徒たちの自由な発想のなかから数々の惰性が生まれる。そこに学校としての理念が通ったとき、惰性が伝統に変わる。理念に合致しない惰性は消えていく。そうやって伝統は積み重なっていく。変化の激しい時代だからこそ、「清き泉」の自浄作用が重要な役割を果たすのだ。

(中)一貫校でも中高別居、進路は助言のみ 甲陽学院の自律 >>

甲陽学院中学校・高等学校(兵庫県西宮市)
 創立は1917年。日本酒の「白鹿」で有名な辰馬本家酒造と深い関わりがあり、地元では「辰馬さんの学校」として親しまれている。1学年は約220人。2019年東大合格者数は34人、京大合格者は49人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2015~19年)平均は132.0人で全国6位の超進学校。卒業生には、サントリーホールディングスの佐治信忠会長、アスキー創業者の西和彦氏、世界初の宇宙ごみ回収業者アストロスケール創業者の岡田光信氏などがいる。

新・男子校という選択 (日経プレミア)

著者 : おおたとしまさ
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 935円 (税込み)

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