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前職の待遇を「当然」と思い込んでいると、転職時に驚かされることも。写真はイメージ=PIXTA

前職の待遇を「当然」と思い込んでいると、転職時に驚かされることも。写真はイメージ=PIXTA

東京商工リサーチの調査によると、2019年1~9月に希望退職や早期退職者を募集した上場企業は27社で、対象人員は1万342人となり、6年ぶりに1万人を超えました。リストラの背景には、年功的な賃金制度を廃止して、生き残れる人事評価制度に切り替えたいという企業の強烈な意思がうかがえます。しかし、従来型賃金に慣れてきたミドル世代は、この流れにどう向き合えばいいのでしょうか? 今回は、転職と年収がいかに幸福に相関するのかをひもといてみました。

先日、転職サイト経由でご相談をいただきお会いしたYさんは、現在52歳です。2カ月前の9月末付で、30年勤めた金属素材を取り扱う中堅商社を退職し、転職活動中ということでした。入社直後から営業部で得意先回りを10年間、担当。その後、人事や経営企画などの管理部門を8年経験し、その後また営業に戻って、課長から部長、執行役員までを経験してきたという経歴の持ち主でした。

キャリアが豊富なうえ、人望も厚く、前職の担当役員からかなり強力な引き留めがあったにもかかわらず退職を決断したそうです。退職の理由は、現職への不満ではなく、昔に取引があった企業のX社長から、後継者候補としての誘いがあったからということでした。

しかし、実際にいざ入社してみると、取締役に名前を連ねるX社長の妻を中心に、一部の幹部の中に血縁の甥への禅譲を画策しているグループが存在することがわかり、社長の一存でYさんを招へいしたことがきっかけで経営者一族内でのいさかいに発展しました。

しかし、優柔不断な社長はこのトラブルに全く対応できる力量がありませんでした。「そんな環境で仕事なんかできるものではなかった」という理由で、やむにやまれず入社後3週間で退職をされたとのことでした。

「年収1000万円は不可欠です」の根拠

「転職の判断として自分自身も準備不足でした」とYさんは振り返りますが、確かにその社長を信じてしまった判断の誤りはあるものの、防ぎようがない側面もあったと思います。ミドル世代の転職で、ごくたまに類似ケースが出現する一つのパターンではありますが、50歳を過ぎて突如路頭に迷うという事態を考えると、その代償はあまりにも大きいと言わざるをえません。

Yさんの場合、比較的短期間でトラブルの発覚があったことと、その理由に(一部本人責任はあるものの)やむを得ない事情もあるため、今回の件での転職の背景が大きな問題になることはほぼないのではないかと思われます。

「もともと転職をする際の条件として、家族にも話をして、前職の年収1200万円から1000万円程度まで下がるというラインまで合意をもらっているので、1000万円以上のラインはなんとか死守したいと考えています」

しかし、最低年収の条件として挙げられていた水準は、現在の状況からすると必要以上に選択肢を減らすマイナス影響が大きいように感じました。生活の現実と転職市場の現実の板挟み、このケースは本当に多くの方が直面する重大問題です。

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