ピラミッドの下に水没した王墓 100年経て発掘へ一歩

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/12/4
ナショナルジオグラフィック日本版

スーダンのヌリ遺跡には、70万平方メートルの砂地に20基以上の古代ピラミッドが建っている(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

2019年1月、米国の研究チームが、アフリカのスーダンにあるピラミッドの下に水没した王墓に入ることに成功した。発掘に同行したクリスティン・ロミー氏が、その模様をリポートする。

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ここはスーダン北部の砂漠地帯。目の前には高さが3階建てほどのピラミッドがそびえ、足元には水中へ降りていく階段がある。この奥に、2300年前のファラオの墓が待っている。

米アリゾナ大学の考古学者ピアース・ポール・クリースマン氏が水没した古代の墓を調査する資金を得たと聞き、ぜひ取材させてほしいと私は申し入れた。

ナスタセンのピラミッド。地下埋葬室へと続く階段(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE DENKOWICZ, NURI PYRAMIDS EXPEDITION)

私が到着する数週間前、クリースマン氏はファラオの墓に入り、第1の部屋、第2の部屋、そして一番奥にある第3の部屋まで到達していた。その部屋の、深さ数メートルの水の中に王の石棺らしきものを発見した。これまで、一度も開けられたり触れられたりしたことはないようだった。

ヌリのピラミッド

このピラミッドと墓は、ナスタセン王のものだ。アフリカのスーダン北部、ナイル川の東岸に近い、面積70万平方メートルのヌリ古代遺跡の中にある。遺跡を空から見ると、紀元前650~前300年の間に建てられた約20基のピラミッドが、宝石を並べたネックレスのように連なっている。

これらのピラミッドの下には、クシュ王国を支配した「黒人ファラオ」たちの墓がある。クシュ王国は、古代エジプト王国の南に位置し、金の豊富な産出地としてエジプトへ黄金を供給していたが、エジプト新王国衰退後の政治的混乱のなか、独自の勢力を拡大し始めた。

そうして紀元前760年から前650年の間に、5人のクシュ王がヌビア(スーダン北部地域)から地中海までエジプト全土を支配した。彼らはエジプト王朝初期の宗教儀式を復活させ、ナイル川沿岸で大規模な建造計画を実施した。そのひとつが、ピラミッドを建造し、その下に王を埋葬することだった。

ヌリの遺跡で最大かつ最古のピラミッドに埋葬されているのは、クシュ王国で最も有名なファラオ、タハルカだ。紀元前7世紀に、アッシリアの攻撃からエルサレムを守るために王国の北端まで援軍を送り、旧約聖書にその名を残した。米ハーバード大学のエジプト学者ジョージ・ライスナー氏は、100年前にヌリを訪れ、タハルカ王の巨大ピラミッドの下にある埋葬室を発掘した。

第3の埋葬室へ続く入り口の上に、定規を当てる発掘責任者のクリースマン氏(PHOTOGRAPH BY JUSTIN SCHNEIDER, NURI PYRAMIDS EXPEDITION)

ライスナー氏のチームはこの時、ヌリにある墓の地図も作成した。そこには80以上の王墓が記載されており、そのおよそ4分の1には、墓の上に砂岩のピラミッドが建設されていた。彼の調査メモには、発見した墓の多くが、近くを流れるナイル川からの地下水に浸かり、通常の発掘は危険であり不可能であると書かれていた。

ライスナー氏は、自身の調査結果を発表することはなかった。クシュ王国のファラオたちは人種的に劣っており、その業績は古いエジプトの伝統をただ引き継いだにすぎないというライスナー氏の誤った認識により、切り捨てられてしまったのだ。

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