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ハーバードが学ぶ日本企業

2019/11/28

ハーバードが学ぶ日本企業

現在、アメリカの企業は中国に巨額の投資をしていますが、それほど成功していません。文化、制度、地理的な差異が大きすぎるからです。同じことが中国のグローバル戦略にも言えます。中国はアフリカ、南米に至るまで世界中の国々に投資をしていますが、文化、制度、地理的な差異が大きすぎる国ではうまくいっていません。

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。日本ユニシス社外取締役。

佐藤 AKB48の運営会社や電通のチームは、海外に進出する際、「重力方程式」や「CAGE」について知っていたと思いますか。

アルカーセル 経済理論は知っていたかどうかは定かではありませんが、秋元康氏は直感力に優れた人ですから、「まずはアジアだ」と思ったのでしょう。

AKB48のグローバル展開において、秋元氏と電通は、スティーブ・ジョブズ氏とティム・クック氏のような関係であったと思います。アイデアを出す人がいて、それを実行する人がいる。電通には海外ネットワークがありますから、まずどの国に進出するかを判断するための必要な情報を提供するのに貢献したと思います。

佐藤 JKT48、BNK48など海外の姉妹グループはAKB48と同じ曲を現地語で歌っています。アジア各国でのローカライズ戦略については、どう思われますか。

曲はグローバル、劇場体験は日本的

アルカーセル これは私の個人的な感覚ですが、AKB48の多くの曲はグローバル色が強く、それほど「日本」は強調されていないと思いました。対照的に劇場での体験は極めて「日本的」です。

私は秋葉原のAKB48劇場で実際に彼女たちのショーを観覧しましたが、残念だったのが曲の間のトークの内容が全部日本語で、私には全く理解できなかったことです。あとから日常のささいな出来事を話していたと聞きましたが、ファンがトークのパートでとても盛り上がっていたのが印象的でした。

JKT48のライブもジャカルタで拝見しましたが、歌、ダンス、ショーの構成などは、AKB48のスタイルを踏襲する一方で、一部、インドネシアの文化に従って、ローカライズされていました。たとえば、衣装のスカート丈は少し長めになっていましたし、トークの部分もインドネシアの女の子の日常を自由に話していました。つまり日本のAKB48が劇場で話していることを台本にして翻訳して話しているのではなく、現地のファンに合わせた内容になっていたのです。

文化的な商品を他国で売り出すとき、その国の需要に合わせて、ローカライズすることはとても重要です。最近ではハリウッド映画でさえも、中国市場にあわせて一部アメリカ版と内容を変えたりしています。それまで映画といえば、どの国で見ても内容は同じでしたが、ハリウッド映画の製作者は、少しだけローカライズすることで、興行収入を増やせることをようやく学んだのです。

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