現地化でアジアの心つかんだAKB ハーバードの視点ハーバードビジネススクール教授 フアン・アルカーセル氏(中)

AKB48は国民的アイドルまでに成長した(C)AKS
AKB48は国民的アイドルまでに成長した(C)AKS

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。フアン・アルカーセル教授は、日本のアイドルグループ、AKB48のグローバル戦略について経済理論から説明する。

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佐藤 アルカーセル教授の授業では、「AKB48のグローバル展開」を教材に「もしAKB48のビジネスモデルを海外で展開するとすると、まずはどの国に進出するのがよいか」を議論すると聞きました。AKB48の運営会社はアメリカをねらわず、まずアジアを狙いましたが、この戦略についてはどう評価していますか。

「まずアジア」は経済理論的に正しい戦略

アルカーセル アジアを狙ったのは、経済学の理論からみても正しい戦略だったと思います。2国間の貿易額の大きさを考える際、よく使われているのが次の重力方程式です。この方程式は物理学の万有引力の法則に由来します。

※Xij はI国とJ国、2国間の貿易額の総額、Yはそれぞれの国の経済規模(通常はGDP)、Dは距離、Aは定数、α、β、γは弾力性

この方程式から、2国間の貿易額は、Dが大きくなればなるほど、少なくなることがわかるでしょう。

ハーバードビジネススクール教授 フアン・アルカーセル氏

さてここで忘れてはならないのは、Dは物理的な距離だけではないということです。スペインのIESEビジネススクールのパンカジ・ゲマワット教授は、Dには次の4つの種類があると指摘しています。

・文化的差異=Cultural Distance
・制度的差異=Administrative Distance
・地理的差異=Geographical Distance
・経済的差異=Economic Distance

ゲマワット教授はこれらを総称して「CAGE」(ケージ)と呼んでいます。

海外進出において必要なのは「コンテクスチュアル・インテリジェンス」、つまり、多様な文化的背景を理解し、適応する能力です。相手国では、資本、情報、人々がどのように行き交っているのかに注目し、自国との差異を理解した上で、どうビジネスを展開していくか戦略を考えなければなりません。

2国間貿易ではCAGE(文化、制度、地理、経済)の差異が近ければ近いほど、成功する確率は高まります。特にG=地理的な距離がとても重要な意味を持ちます。日本にとっては、中国と韓国、アメリカにとってはカナダとメキシコで、ヨーロッパの国々にとっては欧州連合(EU)諸国です。一方、イギリスの企業がアメリカで成功する確率が高いのはG=地理的差異が大きくとも、他の3つ(C、A、E)が比較的近いからです。

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