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ジャカルタでの「JKT48」2期生の練習風景

ジャカルタでの「JKT48」2期生の練習風景

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。9人目は、日本のアイドルグループ、AKB48のグローバル展開を教材にしたフアン・アルカーセル教授だ。

(中)現地化でアジアの心つかんだAKB ハーバードの視点 >>

佐藤 アルカーセル教授は長年、多国籍企業のグローバル戦略を研究されてきました。なぜ今回AKB48に興味をもち、「AKB48のグローバル展開(AKB48:Going Global?)」という教材を書いたのですか。

日タイの学生リポートがきっかけ

アルカーセル 私は過去30年間にわたって、企業が外国へ進出した際の「価値創造」(Create Value)と「価値獲得」(Capture Value)について研究してきました。

ハーバードビジネススクール教授 フアン・アルカーセル氏

ハーバードビジネススクール教授 フアン・アルカーセル氏

「価値創造」とは、進出先の国の人々が魅力的に思ってくれるような製品やサービスを提供すること、「価値獲得」とは、創造した価値から企業が利益を得ることを意味します。

これまで様々な授業で、通信企業、航空企業、半導体メーカー、自動車メーカーなどの事例を教えてきましたが、ずっと食品、エンターテインメント、ファッションなど文化に関わる製品の事例を探していました。

そんなとき、MBAプログラムのグローバル戦略の授業を受講していた日本人の学生とタイ人の学生が2012年に「AKB48のグローバル化戦略」について、素晴らしいリポートを書いて提出してくれました。私は日本のエンターテインメント業界についてもAKB48についてもほぼ何も知りませんでしたが、これは面白い教材になると確信しました。そこで、彼らに協力してもらって、正式な教材にしようと思ったのです。現在、AKB48の教材は、MBAプログラムの「国際競争戦略」という授業で使われています。

佐藤 食品、エンターテインメント、ファッションなど、文化に関わる商品やサービスを外国に売るのは特に難しいといわれています。その理由は何でしょうか。

アルカーセル ある特定の国の固有の文化から生まれた産物を外国へ売るというのは、自動車や航空機とは違って、非常にハードルが高いのです。文化に関わる製品は「価値創造」と「価値獲得」という2つのステップを実現するのが難しい。

まず、進出する国で付加価値を創造するのに時間がかかります。特定の国の文化に根ざした製品は自動車や家電製品のようにすぐに見て価値がわかるものではありません。次に企業はそこからもうけを得る仕組みを確立しなくてはなりません。つまり素晴らしい製品やサービスを提供し、現地の人々に受け入れられたとしても、現地の関連企業ばかりがもうけては元も子もありません。進出元の企業に利益が還元されるような仕組みをつくらなくてはならないのです。

佐藤 「価値創造」には成功したのに、「価値獲得」には至っていない事例はありますか。

オクトーバーフェストは価値獲得に失敗

アルカーセル ドイツのミュンヘンに、「オクトーバーフェスト」という有名なビール祭りがあるのをご存じでしょうか。私は13年に「ミュンヘンのオクトーバーフェスト:地方の伝統的な祭りとグローバル資本主義」という教材を書きましたが、これは素晴らしい付加価値を創造したのに、そこから利益を得ていない典型的な事例です。

「オクトーバーフェスト」はただビールメーカーがビールを飲む場を提供するだけのイベントではありません。ドイツ人のような衣装を着て、ドイツ語で「乾杯の歌」を歌い、ドイツの料理を食べるという、ドイツの文化を丸ごと体験できるお祭りなのです。

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