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なぜ私を「ちゃん」付けしたの 女と男の敬称お作法

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日経ARIA

「なんだろう、この感じ。リアル過ぎて鳥肌が立つ」――そう思う人もいるかもしれない。

◇  ◇  ◇

おじさんにモテがちな人生を歩んできたと語るアラサー女子の田中花子さん(仮名)が、ポツリと言った。

「『ちゃん』づけの距離感、ってありますよね」

「ちゃん」づけの距離感

交友範囲の広い、アクティブな彼女。仕事で、プライベートで、年上の男性ともたくさん知り合う。すると、初めのうちは彼女のことを「田中さん」と呼んでいた相手が、あるとき名字ではなく下の名前に踏み込んで「花子さん」、あまつさえ「花子ちゃん」と呼ぶ。その瞬間、

「あ、このおじさん、私をそういう対象として見始めたな」

と、ピンとくるそうなのだ。「この子かわいいな、まあイケるな、もしかしてそういう関係になってもいいな」とおじさんが(勝手に)思い始めたな。私をそういう「箱」に入れたな、と。

おじさんたちが彼女を下の名前で呼び始めるまでの時間は、飲み会開始後10分のときもあれば3回目の飲み会のときもあり、あるいは同じ職場で働いて1週間目や1年目というときもあって、出会ったTPOや人によってまちまち。でも十中八九、徐々に彼らおじさんは容姿を褒め出したり、「彼氏いるの?」などとプライベートなことを聞いてきたりするのだという。

「花子さん」という呼び方はまだ、相手の出方を見るような、ジャブを繰り出す程度。そう呼んでみて相手の顔色が変われば、何事もなかったかのように「田中さん」に戻し、感触が良ければ「花子ちゃん」へ踏み込んでさらに距離を詰めてくるという。それってどうやらおじさんたちなりのテクニックなのじゃないか、とうっすら感じている田中さんは「でもそういうの、もうおなかいっぱいです」と笑う。

特に相手が独身でなく既婚のおじさんだったりすると、田中さんは「花子ちゃんは彼氏いるの?」というおじさんの下心ジャブに「いますよ。○○さんは『彼女』いるんですか?」と、不倫お断りストレートをスパーンとお見舞いするそうだ。

距離を詰めてくる「元上司」

一方、某外資系メーカーには、「社内ではコンプラ順守で守りが堅いが、社外の女には遠慮なく距離を詰める男」と女性社員の間でささやかれる役員がいるという。ある女性社員は、あきれ気味にこう語る。

「女性部下が転職すると、職場の外で2人きりの食事に誘って、食事中は名字ではなく下の名前で呼んでくるそうなんです。例えばそれまでの職場では普通に名字で『石原さん』だったのが、社外で顔を合わせた瞬間から『さとみさん』で、そんなふうに呼ばれたことのない元部下は何事が始まるのかとびっくりしますよね。時間がたって食後のコーヒーくらいになるとすっかり『さとみちゃん』になっているとかで、一旦転職で社外に出た相手ならもう安全と言わんばかりに、距離の詰めかたに遠慮がない。女性同士って、社内はもちろん、社外にも同業や異業種のネットワークがありますから、そういうのってすぐ耳に入ってきて、みんなで『ヤツは常習犯だな』と話しています」

昨今のコンプライアンス規定やらパワハラ、セクハラ防止やらで「社内では保身のために清く正しくお行儀よく」する、だが、一歩社外に出れば「下の名前にちゃんづけで距離を詰める」――そんな、割とオールドなテクニックを使っておイタをしようとする、夢を見たい世間のおじさんたちの姿が垣間見えてくるのである。しょうがないな。

敬称が意味する「心の距離」

広辞苑(第7版)には「ちゃん《接尾》(サンの転)人を表す名詞に付けて、親しみを表す呼び方」とあるが、「ちゃん」づけが「さん」づけよりはるかに心を許した印象、踏み込んだ印象を生むのは、「ちゃん」という敬称が愛玩の空気をまとっているからなのだろう。小さい子どもや、後輩、ペット。「さん」や「ちゃん」などの敬称が意味するのは敬意の度合いと国語で学ぶけれど、実生活のコミュニケーションで敬称が意味するのは「心の距離」だ。

例えば私が女性同士で名前を呼ばれるとき。

◆河崎さん → ごくプレーンでニュートラル、感情的にはそれがプラマイゼロ地点
◆河崎ちゃん → 私のキャラではそんな風に呼ばれたことないけど、なんかギョーカイっぽくてプレイフルな印象
◆河崎 → 瞬間的に自分の中の後輩マインド、下っ端マインドが起動されて「ハイッ」と姿勢をただすと思う
◆環さん → 「下の名前の親しみ」+「『さん』の敬意」で絶妙にポジティブな「お友達になりましょう」宣言
◆環ちゃん → 同級生とか親戚とか先輩とかで私を古くから知っているか、またはすでに仲良し女子同士
◆環 → 「同じ釜の飯を食った」マブダチ感

ところが、これが男性に下の名前で呼ばれるとなると、状況が一変する。

◆環さん → 「おっ? なんで下の名前で呼んだ? どういう意図?」
◆環ちゃん → 「ほう……。勇気あるなキミ」
◆環 → 「えーと、そちらさまはアタクシのダンナか元カレかなにかでいらっしゃいましたでしょうか」

アラフィフに足を踏み入れたコワい私を下の名前で呼んでくださるような奇特な男性はまあいらっしゃらないがゆえに、オトナの女を下の名前で呼ぶことにはなんかムフフと口元が緩みかねない「相当な一線」を越える印象を受ける。「あっ、やっ、ちょっと、ダメだったら!」感である。だからなのだろう、知恵のある年下男子は戦略的に年上女子を「○○ちゃん」「○○(呼び捨て)」と呼んで、相手をメロメロにするのだそうだ。ふーんそうなのか、冥土のみやげに一度呼ばれてみたいものだな……(遠い目)。

女性上司となる世代の「敬称略」マナーとは?

このようなご時世、男性の職場のマナーをあれこれ糾弾するだけでなく、振り返って女性の側も、女性同士や、対男性のときに相手をどう呼ぶかというコミュニケーションの繊細な感性は備えていた方がいい時代なのだと思う。

アイドルファンなどのオタク女子界隈(かいわい)や、リアル世間での年上女子から年下男子への態度にも見受けられるのだが、もえやらキュンやらの対象を

◆山田さん→山田クン→山田
◆太郎さん→太郎クン→太郎

みたいに、愛が(一方的に)濃縮されるにつれて距離を(一方的に)縮めていく傾向がある。

「太郎がさぁ」。この、女子が男子を「敬称略」して呼び捨てするときの「私のもの」オーラったら、同じ女性から見てもすごいものが。

オタク女子界隈(かいわい)なんかでは、対象を呼び捨てするファンはそりゃもう、それまで投下してきた時間も体力も金額も愛情の濃さも(あと本人のキャラの濃さも)ガチレベルのファンだし、自分の応援によって相手を育てている(自分が養分になっている)という意識がある。友達目線や姉目線や母目線ということもままあるが、多くの場合において脳内ポジションは「彼女」だ。「私の」太郎、なのである。

だからなのだ、リアル世間で女性上司が男性部下を「山田ぁ!」どころか、よりによって「太郎ぉ!」なんて呼んでたら、もう肉体関係を示唆しているとしか思えない。その場にいる全員の耳と神経が一斉にその方向へ向けられるだろう。だが割と多くの職場において、「山田ぁ」を連発する50代以上のガチガチ管理職女性の姿が目撃されている……。「太郎ぉ」でなくてよかった、と、その管理職女性の身をおもんぱかって胸をなでおろす私である。

おそらくその女性管理職にとっては、これまで長年戦ってきたがゆえに、その男女差のないスタイルが武器であり武装であり、「フランクでニュートラルな自分」像なのだろうと、私もよく理解できる。きっとこれまでのキャリアで、さんざんそのひと自身も男性上司に「敬称略」され、同じチームでの連帯感や所属意識を高めてきたのだ。

ただ、コンプラ時代の職場で、男性上司が部下を「山田ぁ!」と呼びつけることさえパワハラと言われかねない男性の戦々恐々ぶりを見るに、翻って女性側も「山田ぁ!」ましてや「太郎ぉ!」をいつまで続けられるのかな、とふと考える。

男女に限らず、人間関係は鏡合わせ。相手にマナーを求めるなら、自分の側にもマナーが求められるのだ。

河崎環
コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。家族の転勤により桜蔭学園中高から大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での生活を経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。子どもは社会人になる長女、中学生の長男。著書に『女子の生き様は顔に出る』、『オタク中年女子のすすめ』

[日経ARIA 2019年7月16日付の掲載記事を基に再構成]

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