「なんだろう、この感じ。リアル過ぎて鳥肌が立つ」――そう思う人もいるかもしれない。女性の「あるある」を日々探求し、根こそぎ掘り起こしては丁寧に解剖、360度視点で示唆に富む気づきを与え続けてくれるコラムニストの河崎環さん。気になるのが、「敬称略」。え、どういうこと?
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おじさんにモテがちな人生を歩んできたと語るアラサー女子の田中花子さん(仮名)が、ポツリと言った。
「『ちゃん』づけの距離感、ってありますよね」
「ちゃん」づけの距離感
交友範囲の広い、アクティブな彼女。仕事で、プライベートで、年上の男性ともたくさん知り合う。すると、初めのうちは彼女のことを「田中さん」と呼んでいた相手が、あるとき名字ではなく下の名前に踏み込んで「花子さん」、あまつさえ「花子ちゃん」と呼ぶ。その瞬間、
「あ、このおじさん、私をそういう対象として見始めたな」
と、ピンとくるそうなのだ。「この子かわいいな、まあイケるな、もしかしてそういう関係になってもいいな」とおじさんが(勝手に)思い始めたな。私をそういう「箱」に入れたな、と。
おじさんたちが彼女を下の名前で呼び始めるまでの時間は、飲み会開始後10分のときもあれば3回目の飲み会のときもあり、あるいは同じ職場で働いて1週間目や1年目というときもあって、出会ったTPOや人によってまちまち。でも十中八九、徐々に彼らおじさんは容姿を褒め出したり、「彼氏いるの?」などとプライベートなことを聞いてきたりするのだという。
「花子さん」という呼び方はまだ、相手の出方を見るような、ジャブを繰り出す程度。そう呼んでみて相手の顔色が変われば、何事もなかったかのように「田中さん」に戻し、感触が良ければ「花子ちゃん」へ踏み込んでさらに距離を詰めてくるという。それってどうやらおじさんたちなりのテクニックなのじゃないか、とうっすら感じている田中さんは「でもそういうの、もうおなかいっぱいです」と笑う。
特に相手が独身でなく既婚のおじさんだったりすると、田中さんは「花子ちゃんは彼氏いるの?」というおじさんの下心ジャブに「いますよ。○○さんは『彼女』いるんですか?」と、不倫お断りストレートをスパーンとお見舞いするそうだ。