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幅広い欧風の家庭料理をワインと 東京・祖師ケ谷大蔵

2019/12/2
「岩手県短角牛内もも肉のグリル」はロゼの手前まで火を入れ、表面はカリッとして中から肉汁がにじみ出る
「岩手県短角牛内もも肉のグリル」はロゼの手前まで火を入れ、表面はカリッとして中から肉汁がにじみ出る

新宿駅から小田急電鉄小田原線に20分ほど乗ると祖師ヶ谷大蔵(そしがやおおくら)駅に着く。落ち着いた雰囲気の住宅街とにぎやかな商店街が共存するこの街には、食にこだわる人たちも満足する店がさりげなく営まれている。2018年12月、千代田区麹町から世田谷区祖師谷に移転オープンしたビストロ「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)」もそんな一軒だ。心なごませる雰囲気と本格的な料理に多くのファンが生まれている。

Summary
1.普段の日にくつろいで料理とワインが楽しめるビストロ
2.フレンチからスパニッシュまで、ていねいに作られた欧風料理
3.ワイン好きオーナー夫妻が厳選したリーズナブルなワイン

駅前から始まる通称「ウルトラマン商店街」は朝から晩まで人通りの絶えないにぎやかな商店街。その横道にひっそりと看板が出ている「春風駘蕩」はちょっと秘密にしておきたくなる隠れ家らしい風情がある。

地下に続く階段の先にあるグリーンのドアを開けると現れるのは、外の喧噪(けんそう)がウソのような落ち着いた空間。アンティークの家具が年月を経た落ち着きと木のぬくもりを感じさせ、大人がくつろげる雰囲気をかもし出している。

「春風駘蕩」という四字熟語は春風のようにうららかなさまを意味する。店を訪れた人にリラックスしてゆったりとした時間を過ごしてもらいたいという思いから、この言葉を店名にしたのだという。

オーナーシェフの大塚将央さんは「帰り際に『おいしかった』より『楽しかった』と言ってもらえるような店でありたいですね」という。

奥さんのあゆみさんと2人で切り盛りし、温かな笑顔あふれる自然体のもてなしが「春風駘蕩」で過ごす時間を居心地の良いものにしてくれる。

大塚さんはクラシックなフランス料理を提供するレストランでキャリアをスタート。その後、家庭的な郷土料理を学ぼうとイタリアへ渡り、ウンブリア州ペルージャのオステリアでの修業を経て、神楽坂の名店スペインバル「エル・カミーノ」(現在は閉店)の姉妹店で4年間活躍した。

2011年に独立し、ワインを気楽に楽しんでもらおうと日本ワインをメインにした「春風駘蕩」をあゆみさんとともに麹町にオープン。ビルのたて替えに伴い、移転先を探していた時に出合った街が祖師谷だった。

「食べることを楽しんでいる人が多いですね」大塚さんは街の魅力をこう語る。これまで全く縁がなかった土地だが、地元に根付いた店で食を楽しむ人々の姿を見て、ここにしようと決めたという。

麹町時代はワインバースタイルだったが、移転後は大塚さんが得意とする料理を充実させた。ワインは料理に合うものを産地関係なくセレクトし、料理もワインも楽しみの幅がさらに広がったビストロスタイルとなった。

コンセプトは「飲み疲れない、食べ疲れない、ほっとする味わい」。

「ちゃんと素材の味がする料理を作りたいですね」(大塚さん)

目の前にある素材が一番おいしくなるようにと、大塚さんの多彩な引き出しから生まれる料理の数々。

おのずとジャンルは多様となり、フレンチからスペイン料理のタパスまでジャンルにとらわれない料理がメニューに並ぶ。

生ハムのかたまりを丸のまま使ってだしをとる「レンズ豆と自家製ソーセージのスープ」

家庭料理のようにほっこりなごみ、さらに素材を生かす繊細な工夫がほどこされた料理をご紹介しよう。

「だしを感じられる料理は日本人をホッとさせると思うんです」(大塚さん)

同店では、旬の野菜を使ったスープがシーズンごとに登場する。立ち上る湯気もごちそうの「レンズ豆と自家製ソーセージのスープ」。フランスのニースで食べた思い出の料理を大塚さん流にアレンジしたひと品だ。

だしには生ハムのかたまりを丸ごと使っている。肉のうま味、たっぷり入ったレンズ豆のほっこり感、野菜の甘み、そして隠し味に入れているオリーブオイルのコクとビネガーの酸味。それぞれの味のバランスが絶妙で、複雑さがありながらも飲み口はサラリとしている。

ゴロッと入っている、ほんのりスパイスがきいた粗びきソーセージとの相性も抜群。奥深い味わいがしみじみと体にしみていくようだ。

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