ウナギ・ワカサギが殺虫剤で激減 宍道湖の調査

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/12/2

ネオニコチノイドは、植物に吸収されて、葉やその他の組織の中に蓄えられる浸透性の殺虫剤だ。種子のコーティングによく使用されるが、これらのコーティングはしばしば土壌に溶け出して流出する。さまざまな研究により、世界中の湖や小川などでネオニコチノイド汚染が起きていることがわかっている。

232人の他の署名者とともに、ネオニコチノイドのさらなる規制を求める手紙を発表したことがある英サセックス大学の生物学教授デイブ・グールソン氏は、今回の論文は、規制当局がこの物質の承認や事前の調査方法について考え直す必要があることを示唆するものだと評価する。

ジェンセン氏は「サイエンス」に今回の論文に関する論考を発表した。氏によると、一般に、規制当局は特定の動物に対する短期的な影響を調査し、食物網への影響など、長期的かつ間接的な影響については調べられていないという。

対して研究者は、ネオニコチノイドの大きな問題を繰り返し見つけている。例えば、9月に「サイエンス」に発表された研究では、ネオニコチノイドの使用と鳥の激減との関連が明らかにされた。

ネオニコチノイドが標的以外の昆虫を減らすことがあり、世界的な節足動物の減少に関与していることについては、近年、多くの証拠が集まりつつある。今回の結果もその1つだ。

汚染は世界的な問題

山室氏によると、宍道湖は海とつながっている汽水湖で、淡水湖に比べて生息できる生物の種数が少ないため、ネオニコチノイドの悪影響を受けやすいのかもしれないという。

「ネオニコチノイドを使用して稲作を行うほかの国々の汽水湖や河口域でも、同じように魚が減っているかもしれません」

水田で使用された殺虫剤は、簡単に水に溶け出して流出する。山室氏は、稲作の影響は大きいと思われるが、ネオニコチノイドは水に溶けやすく分解されにくいため、汚染は世界的な問題で、トウモロコシやダイズなどの畑作を行う地域でも起きている可能性があるだろうと言う。

「ネオニコチノイドはもっと厳しく規制される必要があります」と言うのは、環境団体「生物多様性センター(Center for Biological Diversity)」のネイサン・ドンリー氏だ。この論文は、多毛作や害虫を予防するカバークロップ(地被植物)の利用など、農薬を使わないで害虫を駆除する研究への投資を増やすべき理由の1つになるという。

 「社会に問いかけ続けることで、食料生産の必要性と、こうした活動が環境に及ぼす影響とのバランスが取れるようになるのです」とホバーマン氏。

「殺虫剤が生物を殺すために作られたものであることは明らかで、これを環境に使用すれば、仕事をします。殺虫剤への依存を減らす技術に投資をすれば、環境への影響を小さくできます」

著者らは論文の最後で、レイチェル・カーソンの1962年の著書『沈黙の春』の殺虫剤に関するくだりを引用した。「現在、これらのスプレーや粉末やエアゾールは、畑でも庭でも森でも家庭でも、ほとんど至るところで使用されている。『益』虫か『害』虫かを問わず、すべての昆虫を殺す威力をもつ非選択的化学薬品は、歌う鳥や小川で跳ねる魚を沈黙させる」

この言葉が書かれてから60年近くが経過した今、著者らは、カーソンの言葉は今日の状況を不気味なほどよく言い当てていると感じている。彼らは、「ネオニコチノイドが日本の湖に及ぼした生態学的・経済的な影響は、カーソンの予言の正しさを立証している」という言葉で論文を締めくくった。

(文 Douglas Main、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年11月16日付]

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