Men's Fashion

2020年のスーツ 肩の力抜いた「自然な」装いが主流に

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ドレスウエアのご意見番対談

2019.12.11

MEN'S EX

仕事服の多様化、オーダーの活況、トラッドリバイバルなど様々な潮流が生まれ、今、スーツは大きな転換期を迎えている。2020年、スーツはどこへ向かうのか。ドレスウェアのご意見番に“一歩先”を語ってもらった。

鴨志田 康人さん(左)ユナイテッドアローズ クリエイティブ アドヴァイザー/今季からポール・スチュアートのディレクターにも就任し、ますます活躍の場を拡大。カモシタ ユナイテッドアローズも世界から注目されている。

中村 達也さん(右)ビームス クリエイティブディレクター/複雑化する昨今のドレスウェアを万人にわかりやすく提案する教授的存在。数年前から全国のビームス店舗でトークイベントも開催し大盛況。

M.E. 英国調に代表されるクラシック回帰が定着する一方で、イージーな機能ウェアも好調な現在、スーツの需要は二極化が進んでいると感じます。2020年には、スーツはどのような方向に向かっていくとお考えですか?

中村 数年前まで、日本においてはスーツ=ビジネスウェアという考えが一般的でした。しかしスーツ不要のビジネスシーンがかなり増えてきた今、仕事の制服的ではない“楽しむためのスーツ”の提案が目立ってきています。これからはそこがスーツの新しい可能性として広がっていくのではと思います。

鴨志田 それは同感ですね。皆がカジュアル化しているからこそ、逆にスーツの格好よさが際立ってきます。スーツ=ビジネスマンじゃなくて、スーツ=洒落心のある人というイメージですね。1970年代には夜遊びにスーツを着ていく文化がありましたが、そういったことが形を変えてこれから戻ってくるかもしれません。

M.E. なるほど。具体的にどういったスーツに注目していますか?

鴨志田 私にとっては大定番なのですが、改めてブラウンスーツの楽しさを提案していきたいですね。ネイビーやグレーとは違う色合わせの楽しさが最大の魅力だと思います。タイドアップするなら、ジャカードより軽快なプリントタイ。でも、ノータイでサラリと、肩の力を抜いて着るのもこれからの気分だと思います。

[ Key Word / 01 ]
改めてブラウンスーツの楽しさを提案したい

茶スーツを取り入れると色合わせの楽しみがグッと広がると鴨志田氏。 スーツ9万8000円/カモシタ ユナイテッドアローズ、シャツ2万8000円/エリコ フォルミコラ、タイ1万4000円/マイケル ジェイ ドレイク(以上ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)

中村 今まではスーツ=タイドアップという固定観念がありましたが、それも薄れてきていますよね。

鴨志田 そうですね。中でも、本来重厚なイメージのダブルスーツをあえてノータイで着こなすのがおすすめです。シングルをノータイで着ると、ちょっと寂しく感じる場合もありますから。

M.E. なるほど、新鮮です!

鴨志田 あとはフォーマルウェアではないブラックスーツ。春夏なら、黒のリネンスーツなどに注目ですね。

[ Key Word / 02 ]
フォーマルウェアではないブラックスーツ

クラシックには縁遠いと思われていた黒スーツが、これからは洒脱と捉えられる時代に。中でもノータイでさらりと着る装いが粋だ。 スーツ15万6000円/デ ペトリロ、ニット1万8000円/ウィリアム ロッキー フォー ユナイテッドアローズ、スカーフ1万3000円/カモシタ ユナイテッドアローズ(以上ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)

中村 ビームスでも次の春夏はブラックリネンスーツを展開予定です。

M.E. 黒リネンというのは、以前にも流行ったことがあったんですか?

鴨志田 クラシックウェアとしては大々的に流行ったことはないかもしれません。しかし歴史を辿ると、かつては日常的にブラックスーツを着る文化はありました。それがある時代から礼服やモードの色とみなされるようになったのです。ですから、突飛なものというわけではありませんね。フレンチトラッドでは黒のカシミアジャケットなども普通に着用されていました。

中村 僕がビームスに入社したころは黒のウールパンツもポピュラーでしたね。千鳥格子のジャケットなどに合わせてよく穿いたものです。当時はチャコールグレーより黒が売れ筋でしたね。

M.E. それは意外!

鴨志田 チャコールだとコンサバっぽく見えるでしょ。黒ならよりキリッとミニマルに映る。それが好評でした。

M.E. ブラックウールパンツも今後、要注目ですね。中村さんは次の春夏、どんなトピックに注目していますか?

中村 楽しむスーツというカテゴリでは、リネンがまた魅力的に感じます。ピッティでも、例年以上にリネンの提案が目立っていましたね。

鴨志田 生地展でもリネンは多かったので、来季の大きな流れであることは間違いないですね。

中村 正直、多湿な日本では涼しくはないし、ウールよりシワにもなる。そのシワを楽しむという感覚が浸透していくといいなと思います。あとはホワイトのスーツやジャケットも打ち出しのひとつですね。ここ数年、春夏のコレクションはベージュが中心にあって、そのトーンが年によって明るくなったり暗くなったりするんです。次の春夏はそれが明るい方に振れて、ホワイト系が注目されているという流れですね。

鴨志田 2020年春夏シーズンは、全体的に明るい色のものが増えている印象ですね。デザイナーズブランドですでに傾向があって、それがドレスウェアにも繋がっているようです。グレー系でも、明るいライトグレー系が新鮮に見えますね。