スタバが5000円の「決済機能付きペン」を作ったワケ

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「STARBUCKS TOUCH The Pen」(税込み5400円。本体4000円+税に加え、販売時にあらかじめ1000円分がチャージされている)。繰り返しチャージ可能で、オンライン入金や残高補償のサービスが利用できる(写真提供:スターバックス コーヒー ジャパン)
「STARBUCKS TOUCH The Pen」(税込み5400円。本体4000円+税に加え、販売時にあらかじめ1000円分がチャージされている)。繰り返しチャージ可能で、オンライン入金や残高補償のサービスが利用できる(写真提供:スターバックス コーヒー ジャパン)
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スターバックス コーヒー ジャパンが非接触の決済機能付きのボールペンを2019年9月25日に発売した。価格は5000円を超え、高級文具の部類に入る。スマホアプリでの決済を勧めてきた同社が、なぜペンを開発したのかを聞いた。

ゼブラと協業した高級ボールペン

「STARBUCKS TOUCH The Pen(スターバックス タッチ ペン。以下、タッチ ペン)」はスターバックス コーヒー ジャパンが文具メーカーのゼブラ(東京・新宿)と共同開発した新商品。シルバー、ブラック、ホワイトの全3色で、コーヒーをドリップする際に用いるステンレスのケトルやセラミックのドリッパーなどをイメージしたデザインだ。

ペンの上部には非接触型のICチップが埋め込まれているので店頭やオンライン上で事前に入金しておけば、店頭でペンを端末にかざすだけでコーヒーが買える。スターバックスは16年から公式アプリを使ったキャッシュレス決済を導入しており、利用者も順調に増えている。なぜ、決済機能付きのボールペンを開発したのか。

実はスターバックス コーヒー ジャパンは15年5月のiPhoneケースを皮切りに、「STARBUCKS TOUCH(スターバックス タッチ)」シリーズとしていくつかの商品を発売している。

「決済は決して楽しい行為ではない。そんな無機質な瞬間に少しでも楽しみを感じてもらえたら」。スターバックス コーヒー ジャパン デジタル戦略本部の濱野努本部長は、タッチシリーズ開発の理由をそう明かす。

同社はコーヒー・カフェチェーンのなかでもいち早くキャッシュレス決済を導入している。02年に発売したプリペイドカード「スターバックス カード」がそれだ。スターバックス カードが普及した背景には、デザインを豊富にそろえたことも大きいと同社は考える。ポイントカードやプリペイドカードは1種類のデザインしかないというのが一般的。だが、スターバックス カードは季節限定や地域限定で何パターンものデザインを展開した。その結果、ロイヤルティーの高い客を中心にカードを収集する人も現れた。同時に、ギフトとしての需要も生まれた。

アプリを導入した際、カードからの移行の目標値は設定していた。だが、アプリとしてスマホ1台に集約できることに利便性を感じる人もいれば、カードのデザインなど情緒的な面を重視する人もいる。どちらのニーズにも応えたい。その結果、デザイン性の高い雑貨に決済機能を組み合わせるというユニークな発想に行きついた。

これまでに同シリーズから発売した最も高い商品は、バッグ型のチャーム。価格は1万円を超えるが、女性を中心に飛ぶように売れた。「使っていると店頭スタッフに声を掛けられ、コミュニケーションが生まれたという声も聞く」(濱野本部長)

男性を中心に反響

タッチ ペンを開発したきっかけは、ゼブラからの声掛け。タッチシリーズの存在を知っていたゼブラから、高価格帯のボールペンと組み合わせてはどうかという提案があった。非接触型のICチップが進化し、ペンのような形状の製品にも折り曲げて埋め込めるようになったからだ。

「技術的に可能なうえ、高価格帯のペンが市場で売れ行き好調という背景もあった」とスターバックス コーヒー ジャパン デジタルマーケティング部デジタルギフティングチームの土井英人チームマネージャーは振り返る。

インクはドリップコーヒーをイメージした濃い茶色。市販の替え芯(ゼブラNJK-0.5芯)に交換もできる。ペンの上部にはクリップが付いており、ジャケットの胸ポケットやノート、バッグに挟んで携帯できる(写真提供:スターバックス コーヒー ジャパン)

スマホの普及で手書きをする機会も減った。だからこそ、筆記具にはこだわりたいという人は少なくないだろう。「店内で日記をつけたり、スケジュール帳に予定を書き込んだりしている人もよく見かける。気に入ったノートとペンだけ持って来店し、気分転換してもらえれば」(土井チームマネージャー)。発売から1カ月強。男性を中心に反響があるという。

カウンターコーヒーが普及して、どこでも安いコーヒーが飲めるようになった今、「来店頻度が高い人ほど、コーヒーの味だけではなく、スターバックスという『体験』を求めているという認識がある」(濱野本部長)。ただコーヒーを飲むのではなく、スタバそのものが好き――。タッチシリーズは、そんなヘビーユーザーに向けた商品なのだ。「売り上げなどの目標は特に設定していないが、タッチシリーズという新しい取り組みがスターバックスやスターバックスカードのブランディングにつながるとも考えている」(土井チームマネージャー)

今後の課題は商品の価格設定。「ターゲットが狭いという実感はあるので、もう少し手ごろな価格の商品をつくりたい。フラペチーノ目当てに来店する若い世代にも気軽に使ってもらえたら」と土井チームマネージャーは話す。

(ライター 樋口可奈子)

[日経クロストレンド 2019年11月11日の記事を再構成]

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