創業者の水信春夫氏にフランチャイズを認めてもらい「ゆで太郎」の展開に乗り出した

びっくりしましたね。もちろん、「ゆで太郎」がお客さんに支持されているよい店だとはわかっていましたが、損益計算書も見せてもらって、ものすごくよいビジネスだとわかったんです。

ちょうど水信社長の「ゆで太郎」も30店を超えて、この先のマネジメントを考えているところでした。それで、水信社長は信越食品で直営店を続けながら、私のほうでゆで太郎システムを作ってフランチャイズ展開をするという提案をし、OKをいただいたというわけです。

それにしても、どの会社でも、創業した方は面白い人が多いですね。水信社長も、「ほっかほっか亭」創業者の田渕道行さんもそうです。考え方がユニークで、話していて面白く、こだわりなく新しいことができる。

――水信社長は伝統的なそば店開業を夢見て実現しただけでなく、全く新しいそば店を作ってしまったわけですね。

「ゆで太郎」の店内には、創業者・水信春夫氏の理念が書かれた大きな看板がある

そうです。でも、私も変えたところ、新しくやり直したところがあります。実際に店舗展開に着手してみると、そばは、まだまだ合理的に仕事を組み立て直す余地が残っていたとわかったんです。それでマニュアル化し、教育システムを作ることができた。

たとえば、粉や水の計量ですが、以前は1升ますを使っていた。しかし、いつもきちんとすり切りで量っていないもの。職人は「これぐらい」なんて加減したりします。そういうやり方をやめて、重量で計量することにしました。単位もそば屋さん式の尺貫法からメートル法に統一しています。

――よく、その日の気温や湿度に合わせて加水量を変えるのが職人の技だなどとも言いますが、「これぐらい」も大事なのではないですか。

店にエアコンがなかった時代はそうだったでしょう。でも今は製麺室の環境を一定に保てます。加える水の温度もそろえられる。であれば、粉に対する加水量をむしろしっかり決めてしまったほうが失敗がない。

職人ならではの鮮やかな手際などもありますが、そこも合理的にカイゼンできました。たとえば、そばの出来不出来は8割方、加水の良しあしで決まります。そこで、誰でも手際よく上手に水を加えられるために、器にじょうろのように穴をあけた専用の道具を考えて作りました。

コンパクトな店内で、誰もが働きやすくということも考えています。以前はそば粉と小麦粉を狭い製麺室で計量して配合していましたが、今は工場でミックス粉にしてもらっています。その粉の袋も、1袋が40キログラムだったのを、今は10キログラムにしてもらいました。40キログラムなんてパートさんが抱えられませんから。