滑り止めか本命か? 銀行を志望する就活生の本音とは就活探偵団

メガバンクは文系学生の人気企業で上位の常連だった

しかし、厳しい声ばかりではない。探偵が取材を続けていると、銀行を第1志望に据えて就活を終えた学生に出会った。

都内国立大の大学院2年の島谷智之さん(仮名)は理系の研究者のキャリアから転じ、来年4月にバンカーとなる。研究室の仲間が大手電機メーカーや大手IT企業に内定を得るなかで、なぜメガバンクを選んだのか。

島谷さんは、金利や為替、株式などのマーケットが変動しても資産を守れるように、リスクを評価・計量化する仕事を手がけるという。融資先の財務状況も読み解くなど「理系として培った力を生かせる」(島谷さん)。

マイナビの19年卒学生向け調査によると、銀行業界に対して良いイメージを持つポイントを聞いたところ5分の1の学生が「安定性」を挙げた。他業界と比べても、官公庁や電力・ガスなどのエネルギー業界に続いて高い。

銀行に勤めることで財務や会計など高い専門性を身につけられると期待する声もある。国立大の外国語学部4年の杉山桃子さん(仮名)はメガバンクのグローバルビジネスを手掛けるコースで内定を得た。語学力を生かして「世の中のお金の回り方を見極めたい」と意気込みを語る。

会員制コミュ二ティーを運営するMi6(東京・千代田)の川元浩嗣社長は「銀行で起業や経営の基礎を身につけられた」と振り返る。06年に新卒で三井住友銀行に入行し、行内では花形とされる都内の支店で法人営業を担当。企業の財務分析や与信管理などの金融知識が身についた。社長と直接話し、意思決定する場面を目の当たりにすることもあったという。

足元では「フィンテック」と呼ばれるIT企業の金融参入が活発だ。銀行は既存の業務を奪われるのではないかという懸念も語られるが、メガバンクに10年以上勤める社員は笑って反論する。「IT企業がなぜ必死になって金融への参入を目指すか分かりますか。我々の持っている金融知識や顧客網、実績そのものに価値があるという証拠です」。

IT化の波や低金利などの逆境に対し、新たな成長モデルを模索する動きも活発だ。三菱UFJ銀はデジタル人材向けのインターンを19年卒から強化している。デジタル部門の現場で2~4カ月間、人工知能(AI)を用いた顧客サービスの改善といった業務に週2~3日間携わる。1年で計10人ほどを受け入れており、「インターンの評判が上がっている」と手応えを感じている。

三井住友銀のインターンではヘルスケアや農業、新興国支援といったテーマから学生が1つを選び、行員のフィードバックを受けながら社会的課題を解く新規事業を提案できる。「豊富な顧客基盤や情報などのリソース、グループ企業も含めたソリューションを活用して新規ビジネスも創出できる銀行業務の醍醐味を体感してほしい」(同行採用担当)と狙いを話す。

採用も変わりつつある。みずほFGは過去に内定した学生の適性診断の結果を分析。平均すると、商社やコンサルティング会社の応募者に比べて「創造的思考力」が低いことを発見した。金融を取り巻く環境の変化を乗り越えるために、「新しいビジネスも創出できる行員を取り込んでいきたい」(同社採用担当)。

銀行の内定者たちも、自らが変化する業界を担う当事者になる心構えを持ち始めているようだ。地方国立大4年の三島隆平さん(仮名)は4月からメガバンクの総合職になる予定だ。「銀行のビジネスモデルはこれから変わっていくと思います」と淡々と語る。彼らにバトンが託されつつある。

(企業報道部 橋本剛志、鈴木洋介)

[日経産業新聞 2019年11月20日付]

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