「キャリア迷路」から抜け出すためのコミュニティーを主宰する池田千恵氏は、副業NGの会社でも仕事で培ったスキルを無償で提供する「プロボノ」という働き方で自分の市場価値を知ることができ、本業にもシナジー効果が生まれた例もあるといいます。今回は実際に副業NGの会社で働きながらプロボノ活動をしている方のインタビューをお届けします。
自分の専門領域を生かす「プロボノ」とは
前回は、「自分テストマーケティング」という手法を紹介しました。会社にいながらでも社内や社外で小さなチャレンジを繰り返すことにより、ホワイトカラーの仕事に従事しているとなかなか気付かない「労働の対価がいくらか、会社にどのくらいの価値を提供できているか」というコスト感覚や、「世の中に求められているのは自分のどの能力か」というマーケティング感覚が磨かれます。
とはいえ、副業OKの企業はまだ少数派ですし、社内で新しいことをしたいと思ってもなかなかチャンスはないという人も多いことでしょう。副業OKだとしても、本業との兼ね合いや時間のバランスを考えると二の足を踏んでしまいますよね。
そんなときは実際に行動している人に聞け!ということで、今回は「プロボノ」という形態で活動する宮下菜穂子さんにインタビューしました。宮下さんはベンチャーのPR会社でチームリーダーをつとめながらソーシャルアクションを行う「共働き未来大学」でプロボノとして活動しています。他にも地域活動として在住の区の子育て支援イベントの広報などのボランティアにも参加しています。
プロボノとは、自分の専門領域・得意分野を生かして行う社会貢献活動のことで、近年注目されている働き方です。無償で労働力を提供するという意味ではボランティアと一緒ですが、プロボノは一般的に専門領域・得意分野を提供することを言うことが多いです。
今回は宮下さんに「どうやって始めたか」「会社にどう説明したか」「本業との相乗効果をどんなときに感じるか」といった、何かを始めようと思うときにぶつかる悩みについて聞いてきました。
本業で結果を出したいからプロボノ活動に挑戦
――プロボノ活動をするきっかけは何でしたか?

育休から復職して、成長の踊り場にいるような危機感を感じ、本業をもっと楽しみたい、結果を出したいと思ったのがきっかけです。新卒で現在勤めるベンチャーのPR会社に入社し、PR戦略の立案、企画、施策のディレクション・実行を一貫して担当してきました。2016年春に産休育休を取得し、2017年5月に復職しました。現場では初めての産休育休だったので手探りでしたが、ワーキングママ(ワーママ)としてなんとか仕事をこなせるようになったことを実感することができました。しかし、そのままではそれ以上の成長は望めないのではとも感じ始めたのです。
入社してからずっとPR業務を続けてきて、妊娠前は深夜まで残業をしたり、仕事にのめり込んで過ごしてきました。復職後も手探りながらチームマネジメントと部下の育成をしてきたのですが、もちろん妊娠前と同じというわけにはいきませんでした。とはいえ途中で投げ出すのはちょっと違うと感じていました。1社しか経験していないという自分のキャリアに不安がないわけではなく、「このままでいいのかな……」とモヤモヤしていました。育休中に大ヒットした『LIFE SHIFT』(東洋経済新報社)を読み、これからの時代は変化に対応する姿勢を持ち続ける必要があるなと思ったことも一因です。人生100年という長い目でキャリアを考え、ライフイベントを含めたさまざまな経験をする中で複合的なスキルを身に付けられたらいいな、と思うようになりました。そんな矢先にたまたま「共働き未来大学」のプロボノ募集を知り、会社に話をした上で応募しました。