STORY 東京海上日動火災保険 vol.26

ダイバーシティは成長の源泉、失敗を恐れず挑戦する企業へ

東京海上日動火災保険
広瀬 伸一社長インタビュー

「女性社員の働きは益々大きな力になってきている」。東京海上日動火災保険が女性活躍推進の取り組みを本格的に始めて十数年。今年4月に就任した広瀬伸一社長(59)はその効果を実感するとともに、まだまだ女性社員の活躍の場は増えるとみる。「グローバル時代は多様な考え方や感性、すなわちダイバーシティが成長の源泉。近年相次ぐ自然災害の対応でも女性の視点が欠かせない」。損害保険会社として社会の挑戦を支え続けるために、社員一人ひとりが主体的に挑戦できる企業風土にしていきたいと意欲を示す。

社内のあらゆる意思決定の場に女性社員の参画を

――豪雨、台風、地震など大きな自然災害が相次ぎ、損害保険会社の役割が改めて注目されています。

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広瀬伸一社長は1995年の阪神大震災を神戸支店で経験した。「災害や事故からの早期の復旧復興の力になることが損害保険会社の最大の使命」という

「残念なことに昨年に続いて今年も大規模災害が相次ぎました。災害や事故など、いざという時にお客様のお役に立つのが私たち損保会社の使命です。一刻も早い復旧復興につながるように、被災されたお客様により迅速かつ着実に保険金をお支払いする取り組みを強化しています。一つはテクノロジーの活用です。被害が広域に及んだ今年10月の台風19号では人工衛星の画像をAI(人工知能)で解析し、浸水範囲や浸水高を特定することで、被害状況を確認する作業を効率化しました。被災地の現場で被害の概算金額を速やかに算出するアプリや、Webでお客様が被害箇所の画像を送信して報告できるシステムなども開発し、スピーディーなお支払いにつながる新技術を次々と損害サービスに取り入れています」

「もう一つは人の力です。保険は『People's Business』と言われ、お客様に寄り添うことが何よりも大切です。最新の技術で効率化を進め、一方で人にしか生み出せない価値を感動レベルまで高めたい。その意味で女性社員の重要性は我が社にとってとても大きくなっています。10年ほど前までは男性が営業、女性は事務という役割が主流でしたが、業務プロセスの抜本改革によって事務手続きを減らし、女性の役割も変革しています。2008年に女性の営業担当者は全国で120人ほどでしたが、2018年には16倍の約2000人になりました。女性ならではの視点や感性は新たな力となります。大規模災害でも全国から応援で被災地に駆けつけてくれています。女性の活躍の舞台はこれからも広がっていきます」

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台風発生後、広瀬社長は被災地や周辺各地に設けた対策室を相次ぎ訪問。現地の社員と全国から応援で駆けつけた社員が一体となって迅速な保険金支払いに取り組んでいる

――女性社員の力を実感したのは具体的にどのような時ですか。

「私が高松支店長をしていた時代は、ちょうど女性の営業担当社員が増えるタイミングでした。代理店やお客様の要望を感じ取り、聞き取り、的確に対応する彼女たちが評価されるケースが多々ありました。目配り、気配り、心配りという点で素晴らしい社員が多く、成果も生まれています。東京海上日動あんしん生命保険の社長時代は、女性メンバーだけの商品開発プロジェクトチームを作りました。男性の感性にはないアイデアが具体化し、多くの方に喜ばれました。お客様のニーズがどんどん多様化する時代だからこそ、様々な考え方や感性を取り入れることが重要になります。そのために会社や組織のあらゆる層の意思決定の場に、女性が当たり前に参画している状態をつくっていきたいと考えています」

女性社員が自らキャリアを考え、自発的に学ぶ企業内カレッジを新設

――女性社員の活躍の幅をさらに広げるために会社として何が必要ですか?

「女性・男性を問わず社員には自ら考え、発信し、行動する力を養ってもらうことが大切です。女性社員を対象に、主体性を引き出すための取り組みとして、この秋にグループ内キャリアカレッジ『Tokio Marine Group Women's Career College(TWCC)』を新設しました。女性社員が自らのキャリアを考え、発意を持って自己開発に取り組める学びと経験の場として、『女性とリーダーシップ』や『デザイン思考』などをテーマにした外部講師らによる約4時間のカリキュラムを毎月1回、計6回受講するプログラムです。自発的に学びたいという女性社員に参加してもらうため、通常の社員研修とは異なり、受講希望者は自ら手を挙げ、受講料や交通費を自己負担します。子育て中の社員が参加しやすいよう、講義はすべて土曜日の午後です。定員70人で希望者を募りましたが、全国から約170人の応募がありました。女性社員が自分らしくキャリアを描き、生き生きと働けるよう制度や仕組みの面でサポートしていきます」

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期待して、鍛えて、活躍の機会と場を与える「3つのK」が社員育成には大切と強調する

「もう一つ大切なのは、上司による女性社員の主体性を引き出すマネジメントです。東京海上では社員が活躍できる環境づくりのために『3つのK』、すなわち<期待して><鍛えて><活躍の機会と場を与える>ことを意識して取り組んできました。これを引き続き推進していきます。さらに個人や組織が目指すところ、目標設定を明確にすることです。富士山でもエベレストでも高尾山でも山頂に立つ人は、その山に登ろうと思った人だけなので、みんなでこの山の頂上に登ろうよと意識づけをしたり、自らが登る山を決めてもらったりしながら、目標に向けて歩み始めてもらう働きかけが大事になります」

人材育成はあらゆる層でグローバル化を意識

――自然災害の多発化に加え、少子高齢化やAIをはじめとする新技術の進展など、企業や社会を取り巻く環境は大きく変化しています。

「人生100年時代における健康長寿、ネット社会におけるサイバー攻撃のリスク、最近では自動車のあおり運転など、多種多様な社会課題が次々と生まれてきます。そうした社会課題の解決に貢献できる保険会社であり続けなければなりません。保険の力によって個人や企業や社会が安心して様々な挑戦ができるように支え、いざという時にお役に立つ。そのために最新のテクノロジーと人の力を融合して保険の力を高め、日本の隅々まで安心を広げていける会社になっていきたいと思います」

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部門間や役職の壁を無くし、時代変化にスピーディーに対応できる組織を目指す

「変化が激しい時代です。会社も社員も時代とともに変わらなければなりません。そのためには失敗を恐れずに挑戦できること、しかもスピード感を持って挑戦していくことが必要です。全員が失敗を恐れずスピード感を持って挑戦する企業風土をつくるため、組織のタテとヨコの距離を短くしたいと思います。タテは社長から新入社員までの距離、ヨコは部門間の距離です。社長に就任してから社内SNS「ひろせの部屋」を始めました。日々の出来事をつぶやくことで、もっと身近に感じてもらいたいと思っています。お堅い社内文書よりも気楽に興味を持ってもらえます。最近ですと私が参加したマングローブ植林のシンポジウムやパラスポーツの支援活動などに触れ、広く興味を持ってもらうきっかけにもなっていると思います」

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広瀬社長が日々の出来事をつぶやく社内SNS「ひろせの部屋」の画面

――東京海上グループでは海外企業のM&A(合併・買収)によるグローバル化を積極的に推し進めています。人材育成のグローバル対応はどのように進めていきますか。

「グループ全体でみると、利益の約半分が海外のグループ会社になっています。東京海上日動としてもグローバル人材を育てながら、海外の会社から優れたノウハウを採り入れていくことが必要です。意思決定スピードの違いなど実際、刺激を受けることが多くあります。ダイバーシティの効果ですね。またお取引先の企業も海外展開しているので、損保会社としてお客様をグローバルに守っていかなければなりません。そういう意味で社員には若手からシニアまでグローバルベースの研修を多々行っています。例えば転居を伴う転勤があるグローバルコースの社員については入社3年目までに海外派遣し、若いうちに海外のビジネスに触れてグローバルな視点を習得し、活躍のフィールドを広げる契機としています。転居を伴う転勤がないエリアコース社員もお取引先企業が海外進出しているケースが多いので、海外の営業を経験してもらうような取り組みもしています」

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「社会課題の解決に貢献し続けていく」と自らの挑戦を語る

――これからの日本を支える若い世代にメッセージをお願いします。

「東京海上は140年前、近代化を目指し盛んになった海運・貿易業の挑戦を支えるためにできた海上保険会社として誕生しました。その挑戦が新しい時代をつくっていきました。いま世界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれる大変革が起きています。日本はまだこの変化の対応に出遅れている部分があり、危機意識を持って取り組むべき課題の一つだと考えています」

「日本はこれまでも明治維新や戦後復興など、幾度も難局に立ち向かい、乗り越えてきました。若い方たちにはそういう意識をもっていろいろなことに挑戦してもらいたい。挑戦には失敗がつきものです。うまくいかないことも多いですが、挑戦して初めて私たちは成長できます。失敗してもめげずに、次の成長のためのステップであるとポジティブに考え、前向きな気持ちで挑んでください。私も東京海上日動が社会課題の解決に役立ち、お客様から信頼していただける会社になるように挑戦を続けていきます」

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