先祖代々の土地、権利証なくした 売却はできる?弁護士 志賀剛一

つまり、売り主が書類をきちんと返送しなければ、移転登記はできません。代金を先払いにすれば、買い手は移転登記を受けられないリスクを負います。一方、代金を後払いにすれば、売り主には代金支払いを受けられないリスクが発生してしまうのです。

司法書士などの代理申請、広く利用される

司法書士などの専門資格者が登記の代理申請をする場合に、申請者が間違いなく本人であることを証する「本人確認証明情報」を提供することによって、事前通知を省略することができる「資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度」が通常の取引では広く利用されています。

専門資格者は本人に面談し、運転免許証や健康保険証などの本人確認書類の提示を受けて、本人確認証明情報を作成します。専門資格者は登記の申請者が本人であることを証明する重い責任を負うわけですから、それなりの手数料(数万~十数万円程度)が別途発生します。

なお、本人確認情報は、登記の申請をした資格者代理人が本人確認して作成されたものに限ります。したがって、登記の申請代理人とならない資格者代理人が本人確認して作成した本人確認情報の提供があっても、本人確認情報とは認められません。

実は、弁護士も前述した「専門資格者」に含まれているのですが、私を含めほとんどの弁護士は登記申請業務を行っていないので、事実上は専門資格者=司法書士となります。それ以外に、本人確認情報作成を公証人に依頼する方法もあります。この場合は登記義務者(売り主)が公証人役場へ出向く必要があります。

紙の権利証に代えて「登記識別情報」

ところで、前述したように06年から08年にかけ、紙の権利証(登記済証)に代えて、英数字の符号の組み合わせからなる12桁の符号の「登記識別情報」が発行されるようになりました(法務局ごとに登記識別情報へ移行された日が異なります)。

登記申請の際には登記識別情報通知書面そのものの提出は不要であり、必要なのはこの12桁の符号だけです。つまり、この12桁の符号が他人に知られたりコピーをとられたりすると、登記識別情報通知の書面が権利者の手元にあっても、紙の権利証が盗難されたのと同じ状況になるのです。

登記識別情報通知は12桁の符号が「袋とじ」にされた状態で発行され、開封しない限り見られなくなっています(以前は目隠しシールが貼られていたのですが、このシールがはがれにくいらしく、袋とじに変わりました)。袋とじは開封せずにそのまま保管するようお勧めします。

なお、登記識別情報制度が導入された以降も不動産の取引が行われていない物件については依然として紙の権利証が有効ですので、廃棄などなさらぬようご注意ください。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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