周りの子供たちが着ているようなジーンズにTシャツは許されず、きちんとした服装で登校するように教育された。その理由を父は「ドレスアップすると気分がいいだろう。いい気分がすると勉強がよくできるようになるんだよ」と話した。母はこう言った。「ドレスアップして学校に行くと、自然と背筋がのびるのよ」

お気に入りのブルースーツ「なんでもできる気に」

働きはじめてからたびたび、そうした場面に出くわした。たとえば以前お気に入りだったブルーのスーツ。着るとものすごくエネルギーがわいたという。「着たときの見た目がいい感じでとても好きでした。なんでもできる、という気になりました」。自信をつけたいときはそのスーツをまとうとスイッチが入った。「今回(の受賞で)作ってもらったスーツもパワースーツになるといいですね。大好きな青で体に合って快適」と話す。

「自分にとって考える時間がとっても大事。毎日2~3時間は考える時間を必ずとります」 撮影:筒井義昭

スーツを着る場合でも、ドレスに身を包んでいるときでも、大切にしていることは「自分らしく、自分に誠実である服」。服と自分が一体になっていると感じるときこそ、自分の可能性が大いに引き出されると考えている。「自分らしくないものを着ていると気になってしまって、会議でも集中がそがれてしまいますね」

組織のトップとして意識する装いの哲学は2つある。1つは「シャドー・オブ・リーダー(リーダーの影)という言葉があるように、部下は行いでも服装でも常に上司を見ている。だから服装も部下に見られていると思って考えています」。上司の装いは、どんなときに、何をどう着るのがいいのか、というお手本になる。

もう一つは、マクドナルドと一貫性があるかどうかということ。「カジュアルで、気取らず、あたたかみがある。そしてあらゆるお客様をお迎えする。そんなブランドのモットーと調和するものを着ること。たとえば見た目が近づきがたい感じにならないように気を配ります」。店舗回りのときには来店客やスタッフに親しみを感じてもらえるよう、ジャケットとパンツなどでカジュアル感を出す。一方で、ビジネスレセプションやビジネスパートナーと会う時はスーツで装う。大学生ならスーツ、高校生ならカジュアルなジャケットと、オケージョンごとに服装を考える。

日本の男性は黒のスーツが多くて気になるという。「ビジネスの環境で許される範囲で、もっと個性を出した方がいいのでは」。服には無限のパワーを引き出してくれる力があると信じている。

(Men's Fashion編集長 松本和佳)

サラ・エル・カサノバ
カナダ生まれ。マックマスター大学大学院経営修士課程修了後、1991年にマクドナルド・カナダ入社。2013年に日本マクドナルド代表取締役社長兼CEO就任、14年から現職

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