転職は「この指とまれ」で決まる プロ経営者・松本氏カルビー元会長 松本晃氏

ただ、オファーをくれた会社には、箸にも棒にもかからないようなのも多かった。僕が「まともだ」と思ったのは数社で、なかでも一番まともだったのがJ&Jメディカル(その後、合併してJ&Jに)でした。事業分野が医療関連で、直前まで勤めていたセンチュリーメディカルと真正面から競合するので、最初はためらいました。それでもJ&Jに決めたのには、2つの理由がありました。

J&Jの「クレド」に衝撃

1つは、J&Jの経営理念である「Our Credo(アワ・クレド=我が信条)」との出合いです。実は、伊藤忠でも90年代の初めから当時の室伏稔社長の下で「国際総合企業の理念」(The ITOCHU Credo)というのをつくっていて、92年に完成して発表したんです。でも、読んでも僕には何のことかさっぱりわからず、関心も持てませんでした。ところが、J&Jに僕を誘ってくれ、入社後に僕の最初のボスになったボブ・クローセ氏に見せられたのは、全然違いました。J&Jのクレドに目を通した瞬間、ものすごい衝撃を受けたんです。

J&Jのクレドには、会社が誰に対してどんな責任を果たすべきかが簡潔に書いてありました。責任を果たすべき相手に優先順位が付いています。1番は顧客と取引先、2番が社員とその家族、3番が社会で、最後の4番が株主です。一人ひとりがこれを常に頭に置いて仕事に励めば、会社は成長する。それがクレドの教えでした。そんな経営理念は見たことがなかった。「目からウロコ」と言う表現すら陳腐に思えるほど、インパクトが大きかったんです。

2つ目の理由は、クローセ氏本人です。J&Jは完全なカンパニー制、日本でいえば事業本部制を敷いていて、クローセ氏は医療機器を扱うカンパニーのトップでした。日本のJ&Jメディカルも彼の配下なので、日本にもよく来ていました。来日するたびに「うちに来ないか」と熱心に誘ってくれました。

92年の11月末か12月に、彼が来日したときのことでした。家族のことを聞かれて一通り話したら、全員を都内の高級イタリア料理店に招待してくれたんです。家内も子どもたちも、そんな高級なところで食事したことなんてないから大感動ですよ。おまけに、お土産だと言って段ボール箱いっぱいのJ&Jの商品をくれたんです。

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