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音・映像こだわるドルビーシネマ 座席数より満足度

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NIKKEI STYLE

「音」と「映像」にこだわった「ドルビーシネマ」が都内にオープンした。映画館を運営する松竹マルチプレックスシアターズ(SMT)によると、「10~20代の反響も大きい」という。いったい何がすごいのか。映像と音響技術を長年追い続けてきたオーディオ・ビジュアル評論家と、最近は映画館より動画配信サービスで映画を見る機会が多い平成生まれのライターが関係者を訪ねた。

◇  ◇  ◇

10月4日、「丸の内ピカデリー」(東京・千代田)が、都内初となる「ドルビーシネマ」を導入した。ドルビーシネマとしては日本で4館目、しかも国内初の「専用劇場」となる。

マスコミ向け内覧会ではジェームズ・キャメロンやJ.J.エイブラムスといった映画監督がドルビーシネマを高く評価する映像が流されたが、いったい何がすごいのか。オープニング作品である映画『JOKER』を鑑賞してから、ドルビージャパンの大沢幸弘社長、尾崎卓也シネマ&コンテンツソリューション部部長、SMTの佐藤礼子マーケティング部部長に話を聞いた。

小原由夫(55歳のオーディオ・ビジュアル評論家。以下、小原) 小沼さんがテレビを持っていないことは知っていますけど、映画館には行くんですか?

小沼理(27歳のライター。以下、小沼) 2カ月に一度くらいで、全然行けていないですね。見たい作品はたくさんあるのですが、ネットフリックスでの配信を待てばいいやと思ってしまって。

佐藤礼子さん(以下、佐藤) 2カ月に一度であれば頻繁に行っているほうですよ。2017年の日本人の年間映画鑑賞本数は平均1.4本ですから。

小沼 思った以上に少ないんですね。

佐藤 これは世界的に見ても少ないほうです。でもドルビーシネマはオープン以降、たくさんの方に反響をいただいています。20代や10代の若い方からの反応も大きいんですよ。

小沼 若い人も関心が高いんですね。今日はそのあたりのお話もうかがいたいと思っています。

映画の世界に没入できる

小沼 そもそも「ドルビーシネマ」って何がすごいんでしょうか?

大沢幸弘社長(以下、大沢) 最新の映像技術「Dolby Vision(ドルビービジョン)」、立体音響技術「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」、そして映画をより楽しむための「シアターデザイン」。この3つからなる映画の世界に完全に没入するような体験が魅力です。

尾崎卓也さん(以下、尾崎) ドルビービジョンは最新鋭のHDR(ハイダイナミックレンジ)映像技術で、従来のシネマプロジェクターの約500倍に相当するコントラスト比を実現します。色域も拡張しており、完全な黒色やビビッドな色彩を表現できるようになりました。

小原 映画の前に流れるデモ映像でも、従来の映画館の黒色とドルビーシネマの黒色を比較していましたね。従来のものは若干白っぽいけど、ドルビーシネマは本当に真っ黒。

尾崎 ドルビーアトモスは、劇場内に最大64個のスピーカーを配置し、それぞれを独立駆動させることで立体的な音響を作り出します。

小沼 一つ一つのスピーカーから違う音が出ているってことですか。

小原 昔はLとRの2つのチャンネルの音をスピーカーで流すことしかできませんでしたが、5つのチャンネルを持つ5.1ch、7つのチャンネルを持つ7.1chと徐々に進化していき、現在はチャンネルベースの音響設計でなく、オブジェクトオーディオで64個のスピーカーを駆使するようになったというわけですね。

小沼 すみません、チャンネルベースとオブジェクトオーディオの違いを教えてもらってもいいですか。

小原 簡単に言うと、チャンネルごとに音を振り分けているのがチャンネルベース。これに対し、オブジェクトオーディオでは銃声やヘリコプターの音など一つ一つを「オブジェクト」として記録しています。そのデータに基づいて、スピーカーを使って音の大きさや位置を音響デザイナーが意図した特定の位置に再現するのがオブジェクトオーディオです。ドルビーアトモスには64個のスピーカーがありますが、64の音が鳴っているのではなく、それらのスピーカーを駆使して映画で鳴っている音を再現するイメージです。

小沼 難しいけど、何となくわかりました。内覧会ではある映画作品のライブシーンを見せてもらいましたが、歓声は自分のそばから、音楽は前方から聞こえてきて、まさに会場にいるような臨場感を感じました。それはドルビーアトモスの力だったんですね。

尾崎 シアターデザインに関しては、音響デザインを邪魔しない設計や、照明や光を反射しない素材を使うことで、ドルビービジョンとドルビーアトモスの効果が最大限に発揮されるようにしています。

座席数を減らし「全席ファーストクラス」に

小原 映画館の設備について、具体的なスペックは公表していますか?

大沢 ドルビーシネマのパートナーとなる興行会社との間では共有しています。細かいスペックを示すより、どれだけお客様に映画に集中していただくかがドルビーの思い。一部公表している部分もありますが、基本的には非公表です。

小原 映画館用にオーディオ技術を提供していたTHX社は、S/N値やシステムのレギュレーションを厳格に定めていました(THXは映画監督のジョージ・ルーカス氏がつくった企業。技術を提供するだけでなく劇場などの品質チェックを行い、規定をクリアするとTHX認定のロゴが使用できる。認定後も年に1度の品質チェックが行われ、基準に達していない場合は評価が取り消される)。ドルビーが公開しないのには何か理由があるのかなと。

尾崎 THXと違いドルビーシネマは認証プログラムではありません。細かな仕様は劇場の形によっても変わってきますから。一律のレギュレーションを定めるのではなく、劇場ごとに最適な環境をつくり込んでいくようにしています。もちろん、そのためのガイドラインは設けています。

座席数をあえて半分に

尾崎 これまでの国内に導入されたドルビーシネマは、シネコンの中に1つだけドルビーシネマのスクリーンがある形でしたが、丸の内ピカデリーは、完全に独立したドルビーシネマ専用劇場です。エレベーターからロビーに足を踏み入れた瞬間から、ドルビーシネマの世界が演出されています。ドルビービジョンの「黒」をイメージして映画の券売機やドリンクの機械も黒くするなど、工夫が凝らされています。

佐藤 座席にもこだわりがあります。座席数をリニューアル前の540席から255席に減らし、その分一人一人がゆったりとくつろげる空間にしました。

小原 半分に減らすというのは思い切った決断ですね。

佐藤 それも観客の満足度を優先したからです。また、一般的に「見づらい」という印象がある最前列を、オットマン付きのリクライニングシートにしました。これも好評ですね。

大沢 できるだけどの席からも同じ映画体験ができるように、視野角などもガイドラインで定めています。「全席ファーストクラス」というのが、ドルビーシネマのこだわりですね。

小原 劇場のどの場所にいても、同じようなサウンドが体験できるのも、ドルビーアトモスの利点ですね。

映画全体の表現力を底上げする実力

大沢 お2人は実際に劇場で『JOKER』をご覧になったんですよね。いかがでした?

小原 すごかったですね。『JOKER』は全体としてうす暗い映像が続きますが、コントラストの表現力が高いので、暗闇の中でも人物の動きをしっかり追うことができました。音に関しても、立体的な音響で、音がじわじわと迫ってくるように感じましたし。

小沼 暗い室内や夜のシーンでも登場人物の微妙な表情までわかるので、映画を細部まで楽しめましたね。映画全体の表現力が底上げされたように感じました。ちなみにドルビーシネマに向いている作品というのはあるのですか。

佐藤 多様な作品がマッチすると考えています。『ボヘミアン・ラプソディ』のような音楽映画なら臨場感を堪能できるでしょうし、『アナと雪の女王』のようなアニメーションも色のコントラストをきれいに表現できるでしょう。

尾崎 劇場としては「デジタルシネマパッケージ(DCP)」という形式であればどんな作品でも上映できるのですが、ドルビーシネマ対応作品であれば、映像・音響面で最高の効果が得られます。今後ドルビーシネマ対応コンテンツがハリウッドから続々と登場するので、結果的にはドルビーシネマ対応作品を上映し続けることになるだろうとみています。

大沢 邦画でも、ドルビーシネマ対応作品が作られはじめていますよ。

2500円は高いか

小原 丸の内ピカデリーのドルビーシネマは通常の鑑賞料金に600円がプラスされ、一般料金で2500円になりますが、この価格について小沼さんはどう感じますか?

小沼 ただ映画を1本見る金額と考えると、正直高いと思います。でも、ここでしか体験できない映像や音響だったり、劇場入り口にインスタ映えを意識したスクリーン「AVP(オーディオ・ビジュアル・パスウェイ)」があったりと、映画館に行くことがアトラクション化していますよね。そう考えると、価格は高いわけではないのかなとも感じます。

佐藤 実際、若い方からの反応がビビッドですね。予想以上に好評なんです。

大沢 ドルビーは家庭でも良い環境で視聴できる仕組みを作ってきています。でもドルビーシネマでの体験はそれをはるかに超えています。「すごい映画館があるよ」と、未体験の友達や恋人を連れて行ける場所になったと思います。

小原 爆音上映や応援上映など、プレミアム性がある上映形式が増えているように、映画館へ行くことが「ハレの場」になっている。ドルビーシネマで映画を見るのも、その一つだと感じます。特にそのプレミアム性が映像と音響の良さにあるというのは、作品に寄り添った本質的な進化だと思いますね。お金と時間をかけてでもわざわざ行きたいと思える映画館は久しぶりでした。今後上映される作品も楽しみです。

◇  ◇  ◇

ドルビーシネマでは、本編前にデモ映像が流れ、ドルビービジョンの色彩の豊かさ、ドルビーアトモスの頭上を含めた全方位から音が聞こえてくる臨場感をわかりやすく体感できる。だが実際に映画を見てみると、その技術力をこれみよがしに見せつけるわけではなく、表現力を豊かにすることで、作品全体のクオリティーを高めていることに気づく。高い実力を持ちながらいたって自然なのだ。

実際のところ、ドルビーシネマの良さを実感した今も、ネットフリックスなどを使って自宅で見る機会が減るわけではないだろうと思っている。自宅で見られる手軽さにはそれなりの魅力があるからだ。しかし「近所の映画館で見るなら、交通費を払っても600円高いドルビーシネマまで足を延ばしたい」と感じたのも事実。ドルビーシネマは自宅での映画鑑賞より、街のシネコンにとっての脅威になるのかもしれない。

小原由夫
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。200インチのスクリーンを設置する30畳の視聴室にはドルビーアトモスを再生する体制を構築済み。11月時点での2019年ベスト映画はトッド・フィリップス監督『JOKER』。
小沼理
1992年生まれのライター・編集者。動画サービスはネットフリックスをパソコンで楽しむ毎日。11月時点での2019年ベスト映画は是枝裕和監督『真実』。

(文 小沼理=かみゆ、写真 田口沙織)

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