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センディル・ムッライナタン&エルダー・シャフィール 著 大田直子 訳 ハヤカワ・ノンフィクション文庫

センディル・ムッライナタン&エルダー・シャフィール 著 大田直子 訳 ハヤカワ・ノンフィクション文庫

タイトルを見て、「自分のことだ」と感じた人も多いのでは。いつも時間に追われていて、なかなか同じ状態から抜け出せないのはなぜなのか。本書の著者2人は、経済学に心理学を組み込んだ「行動経済学」の専門家。時間の管理が苦手な人以外に、何度ダイエットに挑戦しても長続きしない人、それなりの収入はあるのに借金を重ねてしまう人などを取り上げている。これらの原因は、その人個人の資質でなく、時間やお金などの「欠乏」が人の行動に潜在的に与える影響なのだという。この事実が豊富な実験やフィールドワークによって明らかにされる。欠乏という状況が人間の心にどう作用するのか。その仕組みを理解すれば、時間やお金などの「欠乏の罠」から抜け出せるヒントを見つけられるかもしれない。

要点1 「欠乏」は能力を高め、同時に視野を狭める

例えば締め切りが迫った仕事がある場合、知らないうちに頭はそのことでいっぱいになる。目先の欠乏に対処することだけにひたすら集中する「トンネリング」の状態は、制約があることで能力や生産性が高まるというプラスの効果がある一方、それ以外のことはすべて意識の外へ締め出されてしまうという代償も伴う。時間の欠乏により本当に大切なことや、放っておくと将来困るようなことも無視されてしまうのだ。

要点2 「欠乏」により問題の処理能力が落ちる

何かが欠乏していると、無意識にそのことが心を占拠し、他のことの処理能力に負荷をかける。処理能力とは論理的に考え、問題を分析し解決する「流動性知能」や、衝動を抑える「実行制御力」のこと。個人の資質や能力に関係なく、誰もが時間やお金が不足すると処理能力が落ちる。その結果、賢明な判断を下せなかったり、抑制が利かなくなったりして、さらに苦しい状況に陥ってしまう。

要点3 その場しのぎが次なる問題を生む

今週の予定をこなすのに精いっぱいで、翌週の予定にまで気が回らない。そんなときは、翌週に起きることが事前に予想できたことであっても、まるで不意打ちのように感じてしまう。これが続くと、緊急の課題を次から次へとその場しのぎでやりくりする、「ジャグリング」状態になる。目先の問題の応急処置だけをしていると、それが次の新しい問題を生み、どんどん深みにはまっていく。そうするうちに「欠乏の罠」からさらに抜け出しにくくなるのだ。

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