朝ドラ『スカーレット』 戸田恵梨香で明るく原点回帰
NHKの連続テレビ小説(以下、朝ドラ)の101作目となる『スカーレット』は、焼き物の里・信楽が舞台。幼い頃から一家を支える働き者の女の子が、女性陶芸家の草分けとして歩み始める姿が、情熱的に描かれる。
物語は昭和22年(1947年)年からスタートする。9歳の川原喜美子(川島夕空)は父親・常治(北村一輝)の事業の失敗で、家族と共に大阪から滋賀の信楽に移り住み、この地域の特産品・信楽焼に出合う。15歳に成長した喜美子(戸田恵梨香)は、一度は大阪に働きに出るものの、家族の生活を支えるために帰郷する。やがて地元の信楽焼にひかれ、女性陶芸家としての道を歩み始める。
制作統括を務める内田ゆき氏は「明るいヒロインの成長物語」という、朝ドラの原点に立ち返ることを意識したという。3人姉妹の長女・喜美子は、山っ気のある常治や、少々体の弱い母親のマツ(富田靖子)を支え、子どもの頃から家事全般を引き受けている女の子。放送第1週では、家事に追われる日々が描かれたが、喜美子が底抜けに明るく、カラッと軽快な展開となっている。
第2週、15歳からの喜美子を演じている戸田は、役作りで撮影に入る3カ月前から陶芸の稽古を開始した。「指も手も細くてきれいなので、陶芸シーンを代役にするのが難しく、どうしようかと悩んでいたら、戸田さんが引き受けてくれました。指導の先生たちも驚くほど上達しています」(内田氏、以下同)
制作陣は内田氏に加え、脚本・水橋文美江氏、チーフ演出・中島由貴氏と女性が集結。「中島さんとは『アシガール』(17年)で組んでいますが、情熱的な性格かつ、ちょっと乙女なところがある人で。今回のヒロインは『はっちゃけているけれどよく働き、人のために動く女の子がいいよね』という考えで一致しました」
「水橋さんは最初にお声掛けしたとき、『ぜひやりたい』と言ってくださって。金沢市のご出身ですが、関西弁のセリフと間合いが、関西出身のスタッフが驚くほどリアルなんです。そして何げないセリフの紡ぎ方が本当に丁寧。脚本の完成度が高く、チームのみんなから信頼されています」
戦後の復興期から激動の時代の中、己の道を極めるべく歩みを進める喜美子について、戸田は「陶芸の世界に飛び込むヒロインの生き様には泥臭さもある」と語る。一本筋の通った骨太の朝ドラになりそうだ。
(日経エンタテインメント!11月号の記事を再構成 文/田中あおい)
[日経MJ2019年11月15日付]
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