住宅の不具合、売り主に責任追及しやすく 民法改正不動産コンサルタント 田中歩

実際、一般消費者同士の取引の場合、瑕疵を建物構造上、主要な部位の木部の腐食や雨漏り、給排水管の故障、シロアリの害に限定するのがほとんどです。瑕疵という言葉のわかりにくさゆえに仕方のないことだったとは思います。ただ、中古住宅の状態について売り主と買い手が想定しているものが異なっていようがいまいが、取引の当事者にしっかり考えてもらうことをせず、一定のところで仲介会社が線引きしているのが実情です。

民法改正後も同じように契約不適合を限定することになる可能性が高いと思います。もちろん、限定された部分については、追完請求や代金減額請求できる権利が追加されますが、実質的には民法改正前と大きく状況が変わることはなく、せっかく品質を定義して取引できるチャンスがあるのにそれをさせない市場のままとなる可能性がありそうです。

主体的に契約条件に関わっていく

契約の目的に合った品質は本来、売り主と買い手がきちんと理解したうえで合意すべきものです。それが簡単ではないために定型化したものを利用するのはわかりますが、それをうのみにするのがよいとは思えません。

売り主が設定した品質が低い場合、例えば契約不適合責任を免責にしたりすると、価格は当然、低めになります。一方、品質が高ければ価格は上がるのが自然ですから、売り主側で瑕疵保険に加入することで価格を上げることも増えてくるかもしれません。

一方、買い手は瑕疵保険という限定された部分の品質保証だけでは不安かもしれません。売買契約上の契約不適合を限定されるとすればますます不安です。そうなると、買い手は、契約前にできる限り広い範囲で建物調査(インスペクション)を実施し、自分の契約の目的に合った品質なのか、自ら確認することも必要になってくると思います。

取引される目的物が、契約の目的に対してどのような状態にあるのかを売り主と買い手ですり合わせて合意する。売り主が定義した状態を買い手がきちんと理解したうえで買う。交渉によってその状態について定義を修正して合意するといった作業をすることが当然のこととなり、よりよい取引ができる環境を醸成する。民法改正はこうしたことを私たちに促そうとしているのではないでしょうか。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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